共感性を高めよう
■共感性を高めて感情移入させる
読者にとって一次創作の主人公は、知らない他人です。
エピソードを通して、読者の分身のように感じられる、もしくは好きになってもらう必要があります。
はじめから、高い能力(チートスキルなど)や見た目の魅力(イケメンなど)があれば、読者を惹きつけることができます。
ですが、成長型主人公や不幸のどん底からはじまる場合は難しいです。
イキる主人公も嫌われる傾向があります。
自慢している人が毛嫌いされるのと同じで、マウントを取るのは好きでも取られるのはイヤに思うのです。
だから、自分はすごいとは言わない主人公が好まれるのです。
無自覚無双が難しいなら、謙虚な態度を取れば好かれます。
謙虚さ以外にも、主人公に性格上の弱さ、愛すべき欠点をもたせるといいです。
「弱みを認められない」
「余裕があるとなまけてしまう」
「長いものに巻かれがち」
「決断できない」
「本音が言えない」
「感情的になってしまう」
「頑固なところがある」
「独りよがりになってしまう」
「下心を持っている」
「嘘をついたことがある」など。
人が普遍的に持っている弱点をもたせることで、読者は主人公に自分との共通点をみつけ、知らない他人から親近感を持てる人になるのです。
登場人物が魅力的であることが、面白い物語にはかかせません。
細かく思い描き、生まれ育った環境まで含めた個性を洗い出しましょう。モデルがあると書きやすいです。
実際の人物や数人かけ合わせて作るのもいいです。
描けない種類の人物には、リアルで出会うことで書きやすくなります。頭の中だけでイメージするのは限界があるので、人間観察は大切です。
成長型の主人公の場合、成長して欠点を克服、救済される展開で描かれます。
チートスキルを持った強い主人公の場合、克服せず続くことが多いのは、完全無欠になると、ピンチが作りづらくなるからです。
たとえ完全無欠になったとしても、忘れていただけでもっていたトラウマを作って弱さを考えてから、成長→克服→救済の展開で描くことができます。
主人公のもつ弱さに共感した読者は、感情を揺さぶられたから名作だと思ってくれるでしょう。
■作中から破綻をなくす
登場人物の言動や伏線回収などについて、一貫性や納得感、筋が通っているかを確認してください。
たとえば、
意味ありげな描写が伏線だと思っていたのに回収されなかった。
大人に高度な説教をする子供が突然、登場する。
主人公を引き立たせるために、敵や周りが無能だった。
ラスト、絡みのなかったキャラとヒロインがくっつく。
悪人が前フリなく、絡みのない子供をかばって死ぬ。
……などなど。
登場人物としてでなく、シナリオにさせられた行動には、一貫性やリアリティ、納得感がないため、作品に没入していた読者を一気に冷めさせてしまいます。
結果、面白くないと離れていくのです。
読者の共感性を途中で切れないためにも、最初から最後まで、夢中にさせましょう。
子供を登場させるときは、特に気をつけましょう。
年齢とともに行動範囲は広がりますが、大人ほど体力があるわけではないので遠くまで気軽に行けません。すぐに疲れてしまいます。
しかもワガママで嘘つきで、見栄っ張り。
泣き虫で、おまけに負けず嫌いで頑固なところもあります。
完璧ではなく未熟。
残酷な一面をもち、それでいて憎めない姿をしています。
子供が持っている知識は、大人にくらべてとても少ないです。かといって、好きなものや興味を持っているものがある子は、大人以上にくわしく知っている場合もあります。
それでも平均して、まだまだ知らないのが子供です。
簡単な日本地理を習うのは四年生から。
日本史を習うのは六年生。
それより小さい子は、都道府県の名前や都市名、歴史の年代なども知りません。
高学年になれば、長編を読み通す力がついてきます。
でも、読書好きな子はごく一部。本が厚い、字が細かいだけで読書が嫌いになる子は多いです。男子読書率は女子に比べると低いです。
二〇二二年五月、一カ月間の平均読書冊数は、小学生は13.2冊、中学生は4.7冊、高校生は1.6冊、不読者(五月一カ月間に読んだ本が0冊の児童生徒)の割合は、小学生は6.4パーセント、中学生は18.6パーセント、高校生は51.1パーセントです。
本を読まなくても、動画サイトや漫画から知識を得る傾向があります。
でも、好きなものだけを見るため、偏った情報を得ていることもあります。
小学生と中学生では、知識も行動範囲も、見えている世界観も違うことを頭に入れておかなくてはなりません。
コナンは、見た目が子供で中身が高校生だから、難しいことをあれこれ知っていても許されるのです。(それでも毎度のごとく、「よくそんなこと知ってるね」と周りの大人たちに驚かれています)
周知されているキャラクター像と、作者がさせたい行動に差があるのなら、描きたい展開までの過程を一歩ずつ、丁寧に組み立てることを忘れないように。
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