感情を揺さぶらせよう・2

★笑える作品について


 面白さの要素は「芸術性」「感情」「知的」「技術」「作家性」の五つがあります。

 芸術には、真実美を追求し、エロスやタナトス、反体制や社会的メッセージが含まれています。

 感情には、幸不幸、共感反感、愛情嫌悪、怒り恐怖、虚しさ嫉妬、焦燥葛藤などがあり、魅力的を引き出しています。

 知的には、新奇性、謎の解明、素養がい、戦略性、結末への期待感、好奇心を刺激する情報価値があります。

 技術には、高度な創作技術、凝った構図、世界の一貫性や多様性、最新技術の使用が盛り込まれます。

 作家性とは、作家独自の思想、感性、体験を内包しています。

 

 逆につまらない作品とは、テーマやメッセージがない、あざとく無感情、印象に残らない人物、既視感、予想がつく展開、戦略のない作業、下手、物語の矛盾や破綻、パターン化、テンプレ、パクリなどです。


 面白さは構成が大事です。

 一万文字以上(四百字詰め原稿用紙換算枚数二十五枚以上)の作品から必要になります。

 文章のカメラワークを考えるとわかりやすいです。

 導入では客観的な状況説明から入ります。

 本編では主観、導入部分に対する自分の意見や仮説をみせます。

 結末では再び客観的視点に戻って、まとめます。 


 笑う作品も泣ける作品とおなじく、作品に共感してもらわなくてはなりません。


 面白さを共感する基本は三つ。

 第一に、リアリティーです。

 物事の因果関係や整合性、登場人物の感情の動きなど、作品の中で現実味を感じられるかが求められます。

 第二に、予測不能な展開です。

 どんでん返しや先の読めない展開が、読者をワクワクさせ、しかも良い意味で期待を裏切ることが求められます。

 第三に、感情移入です。最初から最後まで、登場人物に共感し、結末まで見守ってもらい、追体験してもらう必要があります。


 ですが、世代や知っている知識に依存するため、泣ける作品にくらべると笑わせるのは難しいです。しかも、パロディーは元ネタを知らなければ笑えません。

 突発的な状況を動画や絵で表現できる映像作品(ドラマ、アニメ、漫画など)にくらべて、文章で表現する小説は情報量が限られているため、表情で相手を笑わせるなどは不利。

 それでも笑わせることはできます。


 まず、誰にとって面白いのか、ターゲットを絞るといいです。

 ヒットを狙うのではあれば、中高生がわかる感動ストーリーにします。

 子供は、子供だましを嫌います。

 かといって、難しいと面白く感じません。

 目の肥えた大人は、より深いものを求めますが、流行を生み出すわけではないのです。

 少子化と物価高の現在、ラノベなどの書籍を購入するのは、お金のある大人です。人気があればアニメ化され、それを十代が見て、気に入ればさらに流行る傾向があります。

 大人にとって芸術性とは、考えを与えるきっかけになるもの。作家性とは、作家独自の発想。知的とは、知的好奇心をみたすもの。感情とは、リアリティー。技術とは、新しければいいわけではなく、想像力が面白さを生むものです。

 心に癒やしを求めて作品を手にする読者もまた、これらを含んだものを求めていると考えます。


 すでにある面白いエピソードや作者自身が経験した面白い談話を盛り込むことが一番簡単な方法です。

 読者の興味を引かせるには、具体的でリアルなエピソードが効果的です。

 次に、面白い単語遊びや言葉のひねりを使う方法です。

 日本語には同じ読み方をする漢字や、よく似た言葉があります。

 それらをうまくつかい、驚かせたり笑わせたりすることができます。


 他にも幾つかパターンがあります。

 あり得ない状況や予想外すぎる展開。

 コントのような会話や屁理屈。

 予想以上な馬鹿なことをする。

 普通の人はやらないことを、ありえないほど夢中になる姿を描く。

 笑える程度の理不尽や失敗、不運の連続。

 決め台詞などのくり返しやお約束パターン。

 蘊蓄などの知識(興味深い面白さを感じさせる)。


 笑いはギャップが大切といわれます。

 想定されたものとの落差が大きいほど、笑いが生まれます。

 面白い話のコツは、普通と異常の対比を「9:1」にすることです。

 テンションを上げたり、シュールさを用いたりしても、笑いは生まれません。

 非日常を日常に入れ込むと笑いになるのです。

 お笑いには、裸で大真面目に普通のことをするネタがあります。(類似に下ネタがある)これで笑いが取れるのも、日常に裸という非日常を入れ込んだことでギャップが生まれたからです。

 

 他人の見た目、話し方、雰囲気、学歴や年齢など、表面的な情報から勝手にイメージを持たせます。

 ある日その人物のイメージが異常に見えた場面に遭遇します。

 でもそれがフツーだと知ったとき、このギャップに面白さを感じるのです。

 たとえば、身なりの整った、言葉遣いも丁寧で細身で長身のイケメンで、裕福な医者がいたとします。ある日、インスタントラーメンを大量購入するのを、あなたは目撃します。昔からインスタント食品しか食べないと本人から聞いて、「へえ、そうなんだ」とギャップに面白がる、みたいなことです。

 少女漫画「天使じゃないもん」で、見た目が不良で硬派な男が、雨の日に捨て猫を拾って可愛がるのを目撃して惚れる、のもギャップです。

 先に異常な情報を入れておき、後でフツーの情報に出会う。

 このギャップに面白さが生まれるのです。


 ギャグが面白いのはもちろん、下ネタ号泣してしまったとしても、読んで笑った作品は、高評価になる傾向があります。

 笑いはセンスです。

 ですが、すでに世に出ている笑える作品からパターンを学び、ルール化をすれば、笑いを再現できます。

 ただし、どんなギャグも、万人すべてを笑わせることはできません。

 時代に合わないコメディーは安易にはつかえません。

 ヒット作とは、時代とともに忘れられて懐かしむものです。昔はやったからといって、同じものを使っても、真似やパクリにみられてしまい、笑ってくれません。

 笑える作品を作るときは全員を笑わせようとはせず、作者と同じセンスの人にクスッと笑ってもらえるくらいの小ネタを仕込むくらいがちょうどいいかもしれません。

 ヒットを狙うのなら、面白さを組み合わせて、中高生が楽しめるわかりやすいものを選びましょう。


 

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