「開く」と「閉じる」
■漢字をひらくについて
文全体に対して、漢字使用は二割から三割が読みやすいといわれます。
漢字が多い文章は、黒々と見えて重たく、内容がむずかしい印象を与えます。
有名作家の作品や、どうしても読まなくてはならない理由でもない限り、むずかしそうに書かれた作品を読んでくれる人は少ないでしょう。
逆に、ひらがなが多すぎる文章は幼稚過ぎて、読みたくないと思われるかもしれません。
漢字の閉じ開きには、絶対的なルールはありません。
メディアのルールや、読者層にあわせる必要があります。
★文化庁の改定常用漢字表に含まれない漢字は、ひらきます
常用漢字とは、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」(文化庁/常用漢字表 前書き より引用)です。
個人的な文章や、固有名詞には影響しません。
でも、作家を志してウェブ小説に掲載されているのであれば、一定の基準として押さえておくといいでしょう。
★原則、補助動詞を漢字はひらきます。
代表的なものをあげると、
「頂く」「いただく」
「下さい」「ください」
「見る」「みる」
「置く」「おく」
があります。
動詞の謙譲語として使う場合、「〇〇から(モノやコト)を頂きます」と漢字を閉じます。
対して、「お休みさせていただきます」のように、補助動詞として使う場合は漢字を開きます。
つまり、「お休みさせて頂きます」と先方にメールしたり手紙を送ったりするときに漢字を閉じるのは、正しくありません。
「下さい」も同じ。
実質動詞「くれ」の尊敬語として使う場合、「お金を下さい」と漢字を閉じます。
「お金をお恵みください」のように、補助動詞として使う場合は、漢字を開きます。
よく見かける「ご注意下さい」は、漢字を開くべきです。
「空を見る」「机に置く」など、本来の動詞の意味として使う場合は漢字を閉じます。
「花を育ててみる」「窓を開けておく」などは、本来の意味ではなく、直前の文節の意味を補う、補助動詞として使われています。
補助動詞は、本来の意味が失われているため、ひらがなで表記するのがふつうです。
★原則、補助形容詞も漢字をひらきます
代表的なものに、
「事」「こと」
「時」「とき」
があります。
実質名詞として使う場合、「事と次第」「考え事」「見事」などのように、漢字を閉じます。
対して、「うまいことやってる」「人のこと」「勝手なこと」などのように、抽象的なことがらを表す形式名詞として使う場合は漢字を開きます。
実質名詞として使う場合、「書き入れ時」「梅雨時」「時と場合」などのように、漢字を閉じます。
対して、「いざというとき」などのように、形式名詞として使う場合は漢字を開きます。
あの本を読んだ「こと」がある。
この道をよく通った「もの」です。
これから出かける「ところ」だ。
形式名詞である「こと」「もの」「ところ」「うち」「ため」「とおり」「つもり」「わけ」「はず」などは、直前に修飾する文節が付きます。
形式名詞は、ひらがな表記するのがふつうです。
★原則、接続詞も漢字をひらきます
「或いは」「あるいは」
「及び」「および」
「然も」 「しかも」
「即ち」「すなわち」
「但し」「ただし」
などです。
★一般的に、ひらくといい形容詞もあります。
「有難い」「 ありがたい」
「面白い 」「おもしろい」
「可笑しい」「おかしい」
「無い」「ない」
「素晴らしい」「すばらしい」
「羨ましい」「うらやましい」
「嬉しい」「うれしい」
などです。
★一般的に、ひらくといい副詞もあります
「敢えて」「あえて」
「予め」「あらかじめ」
「何れ」「いずれ」
「凡そ」「およそ」
「折角」「せっかく」
「是非」「ぜひ」
「殆ど」「ほとんど」
「僅か」「わずか」
などです。
★ひらくといい、連体詞の一部もあります
「色々な」「いろいろな」
「色んな」「いろんな」
「所謂」「いわゆる」
「此の・其の」「この・その」
「様々な」「さまざまな」
などです。
★ひらくといい、副助詞もあります
「~位」「~くらい/~ぐらい」
「~等」「~など(ただし、「とう」と読ませる場合は漢字)」
「~程」「~ほど」
「~迄」「~まで」
などです。
★一般的に、ひらがなで表記されているもの
「有る・無い」「ある・ない(モノの有無を表す場合を除く)」
「予め」「あらかじめ」
「致します」「いたします」
「一旦」「いったん」
「是非」「ぜひ」
「そう言えば」「そういえば」
「沢山」「たくさん」
「出来る」「できる」
「~と言う」「~という(発言している場合を除く)」
「~の様な」「~のような」
「共に」「ともに」
「中々」「なかなか」
「良い」「よい(良し悪しの場合を除く)」
「何時」「いつ」
「~の通り」「~のとおり(人や車が通るために使う場合は除く)」
などです。
・「子供」と「子ども」
昔は「子供」だった書き方が二〇〇〇年代、マスコミや出版関係がこぞって「子供」から「子ども」の表記を使いはじめた感があります。
子供と表記すると「お供」のような否定的な意味になる、という理由からだった気がします。
「子供」の表記は、一九七三年の内閣訓令で漢字表記とされました。
ただ、「漢字より柔らかい印象がある」理由から、各省庁とも漢字と平仮名の交ぜ書きの「子ども」を使う例が増えていました。
文科省は、子供と表記しても大人の「お供」のような否定的な意味はないと判断。
公用文書は漢字表記との原則を再確認。
二〇一三年七月刊行の文部科学白書では語句を「子供」に統一、官公庁も「子供」表記に統一されたと考え、漢字に閉じましょう。
・「友達」か「友だち」
「トモダチ」とは「友」に複数の人間を表す接尾語「たち」が結びついた言葉です。
現在では「トモダチたち」と、単数や複数に関係なく用いられているのをみかけます。
しかし、複数を表す「たち」に「達」という漢字を当てるのは推奨されていません。
常用漢字表では、「達」を「たち」と読むのは「友達」のときだけです。
「私達」「君達」は常用漢字表では誤りとなります。
「たち」は「友達」のみ漢字を閉じ、それ以外の「私たち」「君たち」の場合は開きましょう。
・同じ語句が連続するときはは前の漢字だけ閉じる
「一人一人」ではなく、「一人ひとり」
「一つ一つ」ではなく、「一つひとつ」
などです。
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