ウェブ小説向けの文章

 読者が求める書き方をしなければ、ウェブ小説は読まれない。

 ウェブ小説を読む人の中には、歴史小説や推理小説、あるいは純文学や私小説など、濃厚で文章表現の豊かな作品を求めている人もいます。でも、読者全体からすれば少数。

 一人でも読んでもらえれば満足と考えていらっしゃるのでしたら、それはそれでよろしいと思います。

 でも、たくさんの人に自分の書いたお話をウェブ小説として読まれたいと望むのであれば、多くの読者が「読みやすい」とおもえる文章を書く必要があります。


 読まれるための戦略、です。


 ご存知とは思いますが、ウェブ小説向きの文書とは、一文が短く、簡潔でわかりやすい、リズムの良い文章です。

 当然ながら、物語が面白いことが一番大事です。

 でも、それと同じくらい、あなたの作品を読者に伝える技術も必要です。



・一文はできるだけ短くする

 一文が四十字から六十字くらい続くと、読者は読むのが疲れてきます。それ以上は、普段読書をしない人にとっては苦痛に感じ、読むのをやめてしまうでしょう。

 わからないのであれば、声に出してゆっくり読んでみてください。

 どこかで息継ぎをしたくなったのに、読点も入っていない長文を書いていませんか。

 読点がない長文が読めたとしても、読者はあなたほど、肺活量があって心臓が丈夫ではないかもしれません。

 目安は、一文には一つの意味だけを書く、です。

 一文に複数の意味のある文章は理解度が低下し、結果として読みづらく感じます。

 実際に声に出して読んでみてください。

 複数入っていても理解できてるから大丈夫、と思ったかもしれません。

 読者はあなたほど、国語の読解力が高い人ばかりではないのです。

 句読点をつかって、一文を短くしてください。



・難しい熟語や難読漢字を使うのを避ける

 PCやスマホをつかえば、難しい漢字がいろいろ出てきます。

 作家らしい表現だしカッコいいので、使いたくなる気持ちもわかります。

 ウェブ小説を読む多くの読者は、作者であるあなたと同じくらい賢い人ばかりではありません。

 たとえ賢い人でも、働いた後は読解力をつかえないほど頭が鈍くなっているものです。



・同じ文末表現を連続して使わない

 ウェブ小説に限ったことではありません。

 文章全般にいえます。論文は若干違うかもしれません。

「~だった」「~いた」のように、同じ語尾ばかりの文章がつづくと、単調な印象を与えます。

「~している」や体言止めなど、物語に没入できるよう、単調でない文章を心がけましょう。


 

・接続詞を避ける

「また」「そして」「しかし」などの接続詞の多用はやめましょう。

 削っても意味が通ります。

 使う場合は、長編小説なら、一回か二回程度です。

「しかし」「だが」は場面転換があれば使ってください。

 だからといって、場面転換が多すぎるのも問題です。

 ギャグやネタとして使うのなら、構いませんが。



・漢字をひらく、とじる

 漢字をひらがなで書く場合は「漢字をひらく」、ひらがなを漢字にする場合は「漢字をとじる」といいます。

 PCやスマホを使うと、普段つかわない漢字がたくさん出てきます。しかも、勝手に変換してくれるので、ついつい漢字表記にしてしまいがちです。

 漢字表記にするかは、作品によると思います。

 それでもウェブ小説の場合、漢字ばかりが並ぶと文章全体が重たくみえます。

 重たい文章は、読む気が失せます。

 お経の本を読んだことがありますか?

 漢字ばかりです。

 ちょっとした時間に阿弥陀経を開いて、極楽がどういうところなのか気軽に読んでみようとまず思わない。

 六法全書にしてもそう。司法試験を受けようとしている人でない限り、読み込もうとならないのは(細かい字だから、というのもあるけれど)漢字が多いと読む気になりません。

 びっしりと書かれている契約書も同じ。

 読みやすくするためには、漢字をひらきましょう。



・目が滑る文章を避ける

 目が滑る文章とは、書かれてある文章が頭に入ってこない、読みにくい文章のことです。

 わたしたちの目の特性で、似た文字が続くと読み飛ばしてしまうのです。

 結果、文章を読んでも頭に入ってこない。そんな理解されない文章は読みづらくいので、読まれなくなります。

 これを避けるには、頻出文字を減らせばいいのです。

 たとえば、「~の~の~の」や「~が~が~が」「~を~を~を」といった具合に、「の」「が」「を」などを、一文の中につづけている文章があります。

 このような文章を、目が滑るといいます。

 くり返し使っていいのは、二回まで。

 また、ひらがなを漢字にとじることで、目が滑ることが防げます。

 頻出漢字の連続も、目が滑る文章になります。

 文章の流れの中で、おなじ漢字を多用していたら、数を減らして読みやすくしてください。


・主語と述語は省略しない

 小学校で習うことです。

 日本語は、会話でも主語を省略します。

 同じように文章にしたとき、誰がどうしたのかが書かれていないと、読者には伝わりません。

 映像と文章では、情報量が圧倒的に違います。

 PCで制作した四〇〇字のテキスト文章と、一枚の画像とのキロバイトを比べてみればわかるでしょう。

 文章の情報量はただでさえ少ないのに、主語と述語を省略されたら、読者には作者が伝えたいことの半分も伝わらないでしょう。

 主語と述語はお友達です。

 離さず、なるべく近くに書いてください。

 


 

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