サポ限に書いていたこと10 種類とレーベル・ライト文芸1

 ライト文芸についてまとめてみた。

「ライト文芸」とは、​ライトノベルと一般文芸作品の間にあるような小説の作品群を指す言葉であり、​二十一世紀になってから新しく生まれた言葉である。

 名称はまだ定着しておらず「キャラクター小説」「キャラクター文芸」「キャラ文芸」「キャラノベ」「大人向けライトノベル」などと呼ばれることもある。

 ライトノベルと同様にイラストをカバーに用いたエンタメ小説であるが、​書店の棚を見るとコミックコーナーではなく、​文庫コーナーに置かれていることが多い。​

 ライトノベルとライト文芸は多くの共通点を有しているが、​ライトノベルが若年層をメインターゲットとした作風を取っているのに対し、​ライト文芸は青年層を見据えた作風を取っている。​

 また、​ライトノベルに比べて一般文芸作品に近い作風であるとされる。​ただし、​ライトノベルと同様にキャラクター性が強く、​イラストが使われることがある。

 内容はキャラクターを主体にした小説が多いが、架空の世界観や共感をできるキャラクター設定よりも詳細な描写やストーリーを重視している。

 ジャンルは「ホラー」「SF」「恋愛」など多様。中でも「妖怪」「軽めのミステリー」「女性主人公」が多く、一般的なライトノベルよりも幾分、女性読者の比率を高めに想定しているため、ライトノベルのような萌え要素や男性向けのエログロバイオレンスを抑える傾向がある。

 ライト文芸は主な購買層と同じ二十~三十代以上がメインキャラクターとなるものが主流である。

 ライト文芸レーベルで執筆している作者はもともと一般文芸で書いていた人からライトノベル作家まで多様。

 ライトノベルで出版されていた本をライト文芸として再刊行する作品もみられ、さらに「E★エブリスタ」「ピクシブ」「小説家になろう」で連載されていた作品の出版も数多く存在。ケータイ小説サイトからの書籍化も多く、実質ケータイ小説の後継となっているレーベルもある。

 ライトノベルと同じくアニメ化やコミカライズ、実写化などでメディアミックスされる場合もある。

 出版の稼ぎ頭は文庫であり、ライトノベルが好調。でも出版全体が不況。だから利益が出ているライトノベル分野に群がり、参入しやすくするべく、大衆文学やエンターテイメント小説をラノベよりに寄せ、名前も新しいものに変えながら枠を広げて生まれたのが「ライト文芸」なのではと推測する。



■ライト文芸・大衆文学系列

・講談社

「講談社ノベルス」

 創刊は一九八二年。

 創刊当初から主に推理小説の書き下ろしや、講談社から刊行された推理小説の単行本などを新書化して発行。その後はライトノベルに分類される小説も多数出版している。

『メフィスト』掲載の小説が出版される。また、メフィスト賞受賞作も講談社ノベルスに収録されることが多い。


「講談社タイガ文庫」

 創刊は二〇一五年。

 講談社ノベルスの兄弟分として、「十年後も読み継がれるような作品」がコンセプト。

「日々の生活に小説がなくてはならない小説偏愛者のために、エンターテインメント小説の新スタンダードとなるべく」創刊された。

 メインターゲットは二十~三十代。


・KADOKAWA

「MF文庫ダ・ヴィンチMEW」

 創刊は二〇一五年。

 厳密には、MF文庫のサブレーベルという位置づけ。

 対象読者層は二十代~三十代の女性で、読んで元気が出る前向きな「お仕事もの」をラインアップしている。


「角川ホラー文庫」

 創刊は一九九三年。

 ホラー小説が中心。あらゆるジャンルの恐怖が味わえる作品を提供している。日本ホラー小説大賞や『幽』怪談文学賞を受賞した作品のほか、書き下ろしの作品も収録されている。

 近年ではライト文芸に属する作品も目立つ。


「メディアワークス文庫」

 創刊は二〇〇九年。

「ずっと面白い小説を読み続けたい大人たちへ――」がキャッチコピー。  

「電撃文庫」を読み続けてきた世代が社会に出る年齢になってきた事を受け、ライトノベル経験世代や、そうでない一般文芸読者にも受け入れてもらうために様々なジャンルを取り揃え、文芸作品のように高い文章力で構成されている作品が多い。

 一般的な文庫とは違い、表紙がコミックタッチのイラストを用いたものが多く、本文の文字サイズは電撃文庫に比べると大きい。また、カラー口絵が一枚挿入されている。(例外として有川浩『シアター!』、綾崎隼『INNOCENT DESPERADO』、木崎ちあき『博多豚骨ラーメンズ』は二枚挿入)


「富士見L文庫」

 創刊は二〇一四年。

 中高生向けのライトノベルとは一線を画し、大人の文学少女が対象。さらに読みごたえのあるストーリーと世界観を重視する 一方、キャラクターをも重視する。

 レーベル名の「L」は、文芸(Literature)とライトノベル(Light Novel)の頭文字に由来する。前身は 富士見ラノベ文芸大賞。

 オカルト、あやかし、ミステリー、ファンタジー、青春、恋愛、お仕事などのジャンルを展開している。


「eロマンスロイヤル」

 創刊は二〇一六年。

 大人女性向けティーンズラブ小説のレーベル。

 主に女性読者をターゲットとした、大人の恋愛・官能シーンを含んだファンタジージャンルのエンターテインメント作品。大人の女性に人気が高い。

 二〇一五年、KADOKAWAの「オシリス文庫」「eロマンス」との共同企画で「次世代官能小説大賞」が創設。当初は男性向けのオシリス文庫へのみ募集されていた。

 女性向け小説レーベル「eロマンス文庫」の募集も第二回から行われたとき、「小説家になろう」の女性向けR18サイト「ムーンライトノベルズ」とのコラボがはじまる。二〇一八年から「eロマンスロイヤル大賞」と名称がかわり、より女性のトキメキが広がる大人の恋愛・官能シーンを含んだファンタジージャンルのエンターテインメント作品。

 二〇一八年にできた新ブランド「eロマンスロイヤル ピーチ」では、官能度控えめの作品も扱っている。


・集英社

「コバルト文庫」

 創刊は一九七六年。

 集英社の古参少女向けラノベレーベル。

 ティーンズの淡い恋愛をテーマに扱ったものが多く、イラストや表紙に力を入れているのも特徴。

 旧スーパーファンタジー文庫系のファンタジーやSF要素が加味されたものもある。

『りぼん』『別冊マーガレット』『コーラス』などといった集英社の有する少女漫画雑誌の連載作品を原作とする(旧コバルトピンキー系の)ノベライズも扱っている。

 九〇年代から二〇〇〇年代は、ボーイズラブを題材とした作品の増加が顕著だった。現在は少女が主役の姫、嫁、巫女といった設定で書かれる男女の恋愛ものが定番。 

 多くは書き下ろし。隔月刊誌Cobalt連載後に加筆、文庫化するパターンもある。


「オレンジ文庫」

 創刊は二〇一五年。

 コンセプトは「コバルトを卒業した女性たちへ」。

 ライトノベルで育った大人の女性向け作品である。

 ​物語好きの人々に贈るエンターテインメントレーベルであり、​物語の面白さを追求している。

 ​​コバルト文庫から派生したため、​作風や作家、​新人賞等コバルト文庫との共通点が多い。

 公式では、ライト文芸であると言及されている。​

 物語の面白さを追求しているため、​ライトノベルと同様、​​作風もライトミステリーや連作短編が目立り、ファンタジー系や恋愛物などのジャンルも扱っている。

 ​映画やドラマ等のノベライズを出していることも多い。

 一次選考以上通った希望者には評価シートがもらえる。女性向けではありますが、男性の受賞者もいる事も魅力。

 傾向としては、電撃文庫並みにカテゴリーエラーはほとんどない。女主人公も男主人公も、成年や学生、社会人、ミステリーも現代もの、ヴィクトリア朝や江戸時代が舞台の小説であっても受賞しいる。

 しいていうなら、オレンジ文庫から出ていないタイプながら、オレンジ文庫に寄せた小説といえる。尖った作品、処女小説っぽくないものも選ばれている。

 読者が好きな少女小説の王道を書いた人が残っていく。。

 ライト文芸界で人気の「お仕事小説」「後宮小説」「あやかし物」は、質が高くなければ受賞が難しい。

 オレンジ文庫に限らず全体的にいえるのは、ウェブ小説は軽いもの、文芸ものは重厚なものを選ぶ傾向がみられる。


「集英社文庫」

 創刊は一九七七年。

 ​主に集英社が権利を持つ大衆文学を中心に刊行されている。

 もともとは、『小説ジュニア』に掲載されていた青春小説の文庫化からはじまった(今のコバルト文庫)。大人向けの文庫シリーズとしてはじまり、純文学のフィールドでも作品を積極的に文庫化し、​広い読者層を掘り起こそうとした。

 一九九四年より「ナツイチ・キャンペーン」を毎年夏に実施し、人気作品を集めた大規模なフェアを展開。

 一九九五年からはコミック版を復活。

 二〇〇二年から二〇〇九年まで「集英社be文庫」というレーベル名で、料理など生活関係や占い、知名人のエッセイなどを刊行二〇〇三年から二〇一六年、古典作品を紹介する文庫内レーベルとして「集英社文庫ヘリテージ」を刊行した。


・小学館

「小学館文庫」

 創刊は一九九七年。

 当初、文芸と学芸作品は赤、自然とアウトドアが緑、実用とライフスタイルが黄色、と三つのジャンルで構成されていた。

 同文庫のコミック版もあり、小学館の漫画雑誌で過去に連載され、評判を博した作品が収録されている。

 ​​小説賞を主催しており、​受賞作品は娯楽性の高い面白い本が多い。​​読みやすい文章で書かれているため、​あまり活字を読む習慣がない人でも読みやすいとされている。


「小学館文庫キャラブン!」

 創刊は二〇一八年。

『キャラクター小説文庫』の略で、​アニメやゲームなどのキャラクターを題材にした小説を中心に刊行されている。

 二〇二一年に三周年を迎え、イラストレーターの六七質さんによるイメージイラストをテーマにした短編小説「アニバーサリー賞」を募集し、受賞作を刊行した。

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