推敲しよう2

 推敲することをまとめてみました。


一、長文をばっさり切って構造を単純にします。

 ひと息で読みきれない長文を見つけたら、切り分けてください。

 世の人は、作者ほど心臓が丈夫ではありません。

 長文をひと息で読めないのです。

 読点を句点に変えられないかを検討してください。

 読点は感覚で打たないでください。

 以下に示した基本ルールに則って打ちましょう。

「主語となる語が長いとき、その後」

「引用を示す『と』の前」

「接続詞や逆接の後」

「原因や理由、条件を表す節の後」

「時を表す後」

「名詞や動詞に修飾語が二つ以上つくとき、それぞれの間に」

「文、節、句など並列して並べるとき、その間」

「言い換えや説明のとき、その間」

「挿入句のある時、その前後」

「強調するとき、強調語句の後」

「呼びかけや応答、感嘆などの後」

「格助詞の『が』『を』を省略した後」

「読み区切らせたいとき」

「ひらがなが続いて読みにくいとき」

 修飾語が長い場合、そこだけ次の文に回してみましょう。



二、関連強い語句同士をなるべく近くにします。

 主語と述語は仲がいいので近づけてあげてください。

 また、形容詞と名詞、副詞と動詞、修飾語と被修飾語など関連する語句もみつけたら、近づけてあげてください。

 そうすることで、文章の意味がわかりやすくなります。

 わかりやすい文章とは、読みやすい文章のことです。



三、理解しやすく接続詞や接続助詞を選びなおしたり、新たに配置したりします。

 接続詞とは、「そして」「しかし」「たとえば」などです。

 接続助詞は、「~であるが」「~であって」と使用する「が」や「て」といったものです。

 つなぎ言葉である、「まず」「そして」は削りましょう。ほとんど不要です。

 むしろ接続語を使わないほうが、文章はやわらかくなります。

「だから」は順接で(→)、「しかし」は逆接で(←)、「そして」は累加で(+)、「すなわち」は同格で(=)、「ところで」は転換、「あるいは」は対比の意味を持ちます。これらを使えばどうしても理屈っぽく、ゴツゴツした表現になます。

 使うのなら、意図を持って使うといいでしょう。

「が」は、逆接のときに限りつかいます。

「て」でつなぐのと、「、」で分けるのでは意味が変わります。

 複数の事柄を「て」でつなぐ場合、ひとかたまりや、一連の動作があるものとして捉えます。

「、」は、区切られた事柄を別々のものと捉えます。



四、展開上、支障のない余談や冗長な語句を削除します。

 短くて伝わるのなら、長い必要はありません。

 短いほうが記憶に残りやすいですし、短く削った字数を、他の内容を伝えるまわせます。

 思い切って、ばっさり削りましょう。

 当然ですが、必要ならば残しておいてください。




五、意味や内容が同じ文章の表現形式を統一します。

「対になる語句」があれば、それらの表現や語順、あるいは文法構造や語尾を揃えましょう。

 対になる語句とは、「あるいは」「また」といった並列関係や、「一方」「対して」といった対比関係を示す接続詞で繋げる語句のことです。

 並列する情報は、構成も表現もそろえて書きます。

 この技法を、パラレリズムといいます。

 パラレリズムを守ると、文章は単調になります。

 単調だからこそ、必要な情報だけを読めたり、一読で理解できたりするのです。

「ウサギの耳は、長い耳。丸いしっぽが、ウサギのしっぽ」

「ウサギの耳は、長い耳。ウサギのしっぽは、丸いしっぽ」

 前者は何と何を対比したいのかわかりません。

 後者は書き方をそろえているため、違いがはっきりします。




六、共通語句のくくりや熟語の活用により、端的な表現に置き換えます。

 たとえば「彼女はギターも弾くし、ピアノも弾くし、バイオリンも弾く」を「彼女はギターも、ピアノも、バイオリンも弾く」とまとめます。

 複数の文章に同じ語句が繰り返しでてくるのであれば、その語句が一度だけでるような表現に置き換えましょう。文章がすっきりします。

 また、複数の語が長く連なった場合には、熟語にできないかどうかを検討してみましょう。 



七、語句が指し示す対象や内容が確実に特定できるようにします。

 曖昧になりやすい語句の代表は、「それ」「この」など、こそあど言葉とよばれる指示代名詞を用いた語句です。

 できるだけ、こそあど言葉は使わないように削ります。

 余計な指示語を入れると、文がくどくなります。

 削ることで意味が通じやすくなるだけでなく、引き締まります。

 指示後は直前の語句や文を受けますが、直前の文に複数の指示候補があると読み手が迷ってしまいます。

 わからない文章を避けるためにも、指示語は使わず、語句自体を表に出します。



八、語句の意味内容がより厳密になるように表現します。

 決まり文句は、先人が生み出したときは新鮮だったかも知れません。便利だからと広く使われましたが、手垢まみれの決まり文句は、必ずしも伝えたい表現と合致しない場合が多いです。

 決まり文句にある中身を取りだし、伝えたい事柄を忠実に表現することが大切です。

 比喩表現も注意が必要です。比喩表現が成り立つのは、同じ文化や風土を持つ人達の間だけです。作風のあった比喩表現を心がけてください。

 飾りすぎる文章は読み手を混乱させます。

 華麗な形容詞をふんだんに使うだけならまだしも、飾って格好をつけたいけど手持ちの語彙が少ないからと、格好よさそうな言葉を入れて取りつくろうとすればするほど贅肉のある文章になってしまいます。

 飾りを取ってすっきりした文章にすれば引き締まり、伝わりやすくなります。



九、難解な内容をできるだけ平易な言葉で解説します。

 専門書やマニア向けの本が読みづらいのは、読者に甘えているからです。本来やるべき説明を怠っているから読みにくさを生んでしまうのです。

 意味が限定されるように専門用語を使うと、専門外の人にはわかりにくく、読みにくい原因となります。

 くわしく知らない読者にも、安心して読み進めてもらえるよう、修飾語をつかって解説したり、「すなわち」と言い換えるなどの工夫をしましょう。


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