文章を削ろう 

・文章を削ろう 

 伝えるべきことを、わかりやすく正確に書けているのかを確かめるのは、自分が書いた作品を読者に読んでもらうためです。

 別の言い方をすれば、読者に届けるために行います。

 気をつける点は三つ。

「簡潔な文章」「読みやすさ」「味わい深いか」

 リズムよい明快で美しい文章には、読点の区切り方の妙、が大切です。

 さらに強調すべきは「曖昧な表現をつかわない」点です。

 政治家や司会者は、「只今から会を始めさせていただきたいと思います」「今夜は大いに楽しい会にしたいと思います」「ご挨拶をお願いしたいと思います」などなと「思う」を連発させるのを聞いたことがあるでしょう。

 なぜ「会を始めます」「楽しい会にしましょう」「お願いします」と言い切らないのでしょうか。

 思うを使えば、丁寧で、へりくだった言い方と信じ込んでいるのでしょう。聞く側としては、自信がなさそうで頼りなく、弱々しい。ときに慇懃無礼に響くことさえあります。

 彼女彼らの自信のなさそうな口調は、語彙不足からでしょう。「遺憾に思う」の紋切り型の言葉もそうです。

 同じことが、あなたの文書にもありませんか。

 作品にもよるが、一人称の作品や私小説も、「思う」や「考える」の多用は控えましょう。


「は言った」「と言った」も避けたいです。

「 」があったら会話文で、言ったことは明白です。

 洋書の翻訳ものなら、「~は言った」という表現がされることは多いけれども、「頭痛が痛い」「馬から落馬する」と同じ、重複していると捉えてみてください。

 言った以外の表現を使うことを心がけると、「言う」をつかった表現をしなくなっていきます。

 言う以外にも表現する方法はあります。

 叫ぶ、喚く、ささやく、嘆く、愚痴る、ぼやく、突き放す、罵倒する、そそのかす、提案する、嘯く、告白する、つぶやく、笑い飛ばす、せせら笑う、相談する、産生する、質問する、吐き捨てる、同意を求める、などなど。

 表現に困ったら、自分の語彙が足らないのかも知れません。素直に辞書を引くことを心がけましょう。

 どうしても「言う」を使いたい場合は、「照れくさそうに言った」「申し訳無さそうに言った」「恥ずかしげもなく言った」など、修飾の副詞句をつけるといいです。

 

「その・あの・この・それ・これ・そこ・ここ・彼・彼女」「そんな、こんな、そのよな、このような」などの指示形容詞や指示代名詞も避けましょう。 

 作者はそれらが何を示しているのかはわかっているかもしれないが、読者側からすると迷うこともあります。

 とくにミステリー作品で多用されると、謎解き以外で読者を悩ますことになります。

 応募作品なら、選考通過が難しくなるかもしれません。


「そして」「……」「――」も控えます。

 そして以外にも、「おそらく」「しかし」「だが」「つまり」「さらに」「ので」「~が、~」「だから」などの接続詞も乱発しないようにします。

「そして」や三点リーダー、ダッシュも、余韻の間を表現しているものです。

 これらを多用すると、選考側から「この作者は余韻を表現する能力がない」と思われかねません。

 可能な限り、使わないようにしたいです。


「まさに・むろん、もちろん」「のだ・のだった・からだ」の強調語もひかえたいです。

 ここぞというときに使うもので、小説には使わないと思っていた方がいいです。長編小説だと二回か三回くらい。百枚に一回程度の頻度に抑えましょう。

「からだ」は、説明の後付に使われる事が多いです。

 とくにミステリーやエンターテーメント作品では、後出しや出し惜しみは読者や選考側に嫌われる傾向があります。回想や後付をできる限りしないように心がけましょう。


「しまう・しまった」の強調語も乱発は気をつけましょう。


「という・ような・のこと・のほう」「とされる」「としている」「といえる」の水増し語句は使わないようにします。

 使ってしまう人は、日常会話で使用しており、癖になっている。これらの水増し語句がなくなると、伝えたい事がはっきりして読み手にもわかりやすくなります。


 書き終わったら音読し、削っても意味が通る場合は削りましょう。

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