第3話
靴を履き替え僕達は一緒に外に出た。
うわぁ、いい匂いするなあ.....
好きな人からはシャンプーの匂いがした。
嗅いだことがある匂いだった。
誰か家族が使っていたのかもしれない。
それにしても変だ、あんなにクラスでも空気のような僕をクラスのマドンナが一緒に帰ろうなんて誘うはずがない。
やはり、騙されているのだろうか。
帰り道ではなく、どこか別の場所へ連れて行かれて僕は消されてしまうのだろうか。
そんなはずが無いと思っていても、この異常な状況に自然と悪い方向に考えが進んでしまう。
しかも、僕はどこかでそれでもいいと思っている。好きな人とこうやって肩を並べて帰ることが出来ているんだ、悔いは無い。
強いて言うなら帰ること以上のことをしたい....なんて馬鹿げたことを考える。
彼女との帰り道は偶然同じだった。
いつもは1人で帰る道も好きな人と帰ることができるなら至福の時間だ。
僕達は他愛もない話をしながらしばらく帰り道を歩いていく。
彼女の家が見えてきた頃、彼女は急に足を止めて周りを注意深く確認した。
僕は
「どうしたの?」
と聞くと
彼女はさっきまでとは比べ物にならないくらい不安そうな顔をした。
彼女は怯えた様子で
「実は、ストーカーをされているかもしれないの」
と言った。
訳が分からなかった。
彼女は続けて
「最近、家に帰る途中で誰かの視線を感じていて....それで怖くて振り返っても誰もいない、周りにも誰かいる気配がなくて」
その声はとても震えていた。
本当に怖いのだろう。
そして僕は理解した
「今日誘ってくれたのも同じ理由から?」
考えていたことを口に出していた。
まったく、本当に悪い癖だ。
「そう、ごめんね。こんなことで誘っちゃって、小野くんにも帰る人がいたよね。」
彼女は笑顔を作り言った。その作り笑顔は学校で見る彼女より弱弱しかった。
心の底から美しいと思った
こんな顔をされて相手を拒絶することなんてできるわけがない。
僕は
「大丈夫、僕が護るから」
なんて、馬鹿なんだろう。
冴えない僕がクラスのマドンナを護れる訳が無い。
本当に馬鹿だ。
しかし、その言葉を放った時の彼女の顔はとても安心した様子でこちらを涙をうかべた微笑みで見ていた....。
それを見ていた僕は無意識にヨダレを飲んだ。
「ジュルッ....」
僕は君が好き 僕はペンを持った @ZEPA
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