お嬢様は(を)くまさんとわにさんを(は)大事にしてます

とざきとおる

くまさんとわにさんとお嬢様

 メレニア・アーティスト。海上国家タートルリベリア王国の芸術保全を仕事とする芸術大臣の1人娘。


 後継者である彼女も次期大臣としてすでに公務に携わっている。今日も地方の芸術家への視察を行っていた。


 仕事が終わり、魔法で家へとぶっ飛んで帰ってきたメレニアは自分の部屋へ。


「ただいまー!」


 くまさん、わにさんのぬいぐるみに抱き着いた。


「ミレニア……」


「母様。今日はお家にいらしたのですね」


「婿を迎えるまでにやめてちょうだいね」


「でもぉ」


「将来のお婿様に変に思われたくはないでしょう?」


「むぅ。いいもん。けっこんしないもん」


「もう困った子ね」


 このぬいぐるみは、幼いころ母からもらったもの。魔法をかけて大事に手入れをして、貰ったころのもふもふな手触りも残っている。


 毎日、このぬいぐるみとおしゃべりをするのが、メレニアの日課であり、楽しみなのだ。






 夜。


 屋敷の警備は何者かに倒され、黒い装束に身をつづんだ男がやってきた。


「いけるな」


「ぅい」


 アーティスト家の娘を誘拐して身代金を要求しよう。悪だくみをする招かれざる男2人だ。


「拘束の準備はできてるか?」


 相方の返事がない。


「おい、どうした?」


 後ろを振り返ると、そこに。


 大きな熊、ではなく熊のぬいぐるみ? が男をみていた。その足元には男の相方がくたばっている。


「まじかよ」


 相方は王国魔法騎士にも引けを取らない武闘派。それを反撃の間もなく一撃で。


「にげるしかねぇ」


 気軽に入ってしまったことを後悔する。あんな守護者がいるなど聞いていない。


 逃げた先には。


「わに……?」


 最期に男が見たのは、大きなわにのぬいぐるみが襲ってくるところ。男にとって人生一番の恐怖だった。






 のすのすと部屋に戻り、すやすや寝ているメレニアのそばへとよる。熊はメレニアの頭をなでなで。


 くまさんとわにさんは、うなずきあっていつものサイズに戻り、彼女のそばでゆっくりと休眠する。

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お嬢様は(を)くまさんとわにさんを(は)大事にしてます とざきとおる @femania

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