【KAC20232】ゲームセンターはヤンキーのたまり場だと思っていた。
姫川翡翠
東藤と村瀬とクレーンゲーム
村瀬「え、まだやってるん?」
東藤「うるさいねん、集中してるんじゃだまれ」
村瀬「僕がショッピングモールの方に行ってかれこれ30分くらいたったよな? いくら使った?」
東藤「4000円」
村瀬「アホちゃうか?」
東藤「アホちゃうと思う! だって未だにちょくちょくお金入れるの躊躇ってるから! おかげでまだ4000円で済んでいるとも言えなくもない」
村瀬「なんやねんそれ。てか、そんなデカいカー〇ィのぬいぐるみ、とられへんって言うてるやろ。そもそもクレーンゲームは素人が手を出していいもんじゃないんやから」
東藤「誰だって最初は素人やんかぁ!」
村瀬「ちゃうやん、欲しい商品がある場合に限ってクレーンゲームをやる人間を素人と表現しただけやん。だからここでいう玄人は、物が欲しくてクレーンゲームをやる人ではなく、頻繁にゲーセンに足を運んでクレーンゲームを楽しむためにクレーンゲームをやる人のことな。わかる?」
東藤「わかるけどぉ、わからぁん」
村瀬「こういう
東藤「村瀬、ちょっとやってみてくれへん?」
村瀬「えー。お前の方が器用やのに、それでとられへんねやったら僕は絶対無理やろ」
東藤「諦めんなよ!」
村瀬「うわ、なにこいつ」
東藤「もっと熱くなれよ!」
村瀬「きっしょ。こいつどんだけカー〇ィ好きやねん」
東藤「いや違う。いやいや違うくないけど、カー〇ィは大好きやけど、これは昨日某修三先生の動画見たから」
村瀬「なんでやねん」
東藤「気合入れようと思って」
村瀬「おかし……くはないのか? いや、おかしいな。どうせならクレーンゲームの動画見てイメトレしろよ」
東藤「それはカンニングやん」
村瀬「意味わからんわ。とにかく、僕はやらへんで。東藤のお金でやって失敗すると申し訳ないし」
東藤「じゃあ自分の金でやれや」
村瀬「絶対いや。取れても取れなくても無駄やし」
東藤「なんでや!」
村瀬「ええやん、もうネットで転売品買いいな。4000円もあれば絶対買えるで」
東藤「それは違うやん!」
村瀬「テンション高いなぁもう。というか、こんなデカいぬいぐるみどうすんねん。部屋にあっても邪魔やろ」
東藤「邪魔ちゃうよ! ベットに並べるんやん!」
村瀬「並べるて、ひとつだけやん」
東藤「いやいや、俺のベッドにはカー〇ィいっぱいいるで」
村瀬「は? 高校時代お前んち泊まった時、お前の部屋ほとんど何もなかったやん」
東藤「大学生になってバイト始めたから自由に使えるお金が増えたやん。なんとなくカー〇ィのぬいぐるみ買ったらハマってもうて。気が付いたら大小20体くらいいる」
村瀬「はぁ!? まだ大学生なって2か月やぞ?」
東藤「だからバイト代2か月分ほとんどカー〇ィのぬいぐるみに使ってる」
村瀬「ごめん、普通にドン引きやわ」
東藤「カー〇ィに囲まれながらお気に入りを抱き締めて寝る幸せよ」
村瀬「きもっ、うわ、想像してもうた、ガチで気持ち悪くなってきた」
東藤「だから俺の今のベッドはめっちゃピンクやで」
村瀬「チカチカして目ぇ冴えるやろ」
東藤「今日はどうしてもこの子と寝たいのぉ!」
村瀬「ええ加減きっついで、ホンマ自分」
東藤「村瀬はぬいぐるみ嫌いなん?」
村瀬「嫌いというか、別に興味ないだけ。さっきも言ったけど、部屋に置くとこないし、普通に邪魔やし」
東藤「冷めてんね」
村瀬「え、僕の方が変みたいな空気やめてくれへん?」
東藤「まあ全体の半分はお前と反対の意見やからな」
村瀬「2分の1やん」
東藤「そら半分やし。算数も出来ひんの?」
村瀬「ちゃうちゃう、2人中1人って意味や。お前こそ国語できてへんで」
東藤「なにお前、ホンマわがまま」
村瀬「わがままの意味知ってる?」
店員「あの、すみません」
村瀬「はい?」
店員「あの、ずっとクレーンゲームの方をチャレンジされていますよね。今回特別に取りやすいところに移動させましょうか?」
村瀬「そんな、いいんですか?」
店員「はい。私たちもやっぱりお客様には満足して帰っていただきたいので。何より、そちらのお客様のように本当に商品が欲しいと思っていらっしゃる方には、是非ともゲットしていただきたくて」
村瀬「ありがとうございます。助かります。ほら、東藤もお願いしいや」
東藤「……」
村瀬「なんや?」
東藤「ずるい気がする」
村瀬「は?」
東藤「取りやすいところに移動してもらって取れても納得が……」
村瀬「もうええわ。僕がやるんで動かしてもらってもいいですか?」
店員「かしこまりました。しばらくお待ちください」
東藤「え、え、え、」
村瀬「だって自力で取るんやろ? やったら僕が今動かしてもらって取っても問題ないよな?」
店員「こんな感じでよろしいですか?」
村瀬「そんなに動かしてもらっていいんですか? 逆になんか緊張するなぁ。じゃあやってみますね」
店員「はい。イメージとしては降りてくるアームで押す感じですね。そうすると自然に落ちますよ」
村瀬「こんなもんかな?」
店員「いいですね! お上手です!」
東藤「……」
村瀬「……おお、いけた!」
店員「おめでとうございます! いま袋を持ってきますね!」
村瀬「ありがとうございます!」
東藤「……」
村瀬「なんやねんその目」
東藤「ずっこい!」
村瀬「なんでやねん!」
東藤「そんなんずっこいやん!」
村瀬「もう、わがままやなぁ」
東藤「俺にちょうだい!」
村瀬「うわ、ガチ泣きやん。子どもかよ。ええー、でもなー。それじゃあ納得できひんのちゃう?」
東藤「ただでとは言わん。4000円」
村瀬「結局かーい! いやいや、納得っていうのは僕の気持ちことじゃなくて、お前のプライド的な意味なんやけど、待て。無言で一葉差し出すなや。お釣り出るやんけ」
東藤「気持ちを乗せたから釣りはいらん」
村瀬「そんな気持ちいらんわ。ええって。ただでやるって」
東藤「なに? 貴様、イケメンか?」
村瀬「見ればわかるやろ?」
東藤「ん? むしろ見たらわからんくなったわ」
村瀬「わかった。絶対にこのカー〇ィはやらん。決めた」
東藤「そんなぁ殺生なぁ!」
村瀬「抱きついてくんな! キモいんじゃ! ほら、取ってこーい!」
東藤「わんわん!」
店員「あの」
東藤・村瀬「「はい」」
店員「袋です」
村瀬「「ありがとうございます」」
店員「あと、店内ではお静かにお願いします。他のお客様の迷惑になりますので」
東藤・村瀬「「本当に申し訳ありませんでした」」
【KAC20232】ゲームセンターはヤンキーのたまり場だと思っていた。 姫川翡翠 @wataru-0919
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