第4話 絆の力
家を出て店に向かった。
高梨夏海)おはようございます。今日からここで働くことになりました。
高梨夏海さんが挨拶してきた。
僕も挨拶をする。
僕は、高梨夏海さんと二人きりになる。
僕はドキドキしていた。
そんな僕を見たのか、高梨さんは微笑んでくる。
僕は恥ずかしくなり視線を外す。
すると、高梨さんが話しかけてきた。
高梨夏海)ねえ、店長。私のこと好きですか? 僕は、心臓の鼓動が早くなる。
もちろん、好きだと答えようとした。
だが、僕の口からは違う言葉が出てきた。
神山綾斗)もちろん好きだよ。
僕は、自分の口から出た言葉をすぐに後悔した。
こんなことを言えば、勘違いされてしまうかもしれない。
僕は、恋愛対象として好きなのではなくて人としてという意味で言ったのだが……。
すると、予想通り高梨夏海は頬を赤く染めてモジモジし始めた。
高梨夏海)えへっ♪嬉しいです! 私も店長のこと大好きだよ!
そういえば今日だったよね?私の家で同居するの。
神山綾斗)うん。
高梨夏海)楽しみやな!どんな生活なんだろう?ワクワクしてるんよ!これからよろしくね! 高梨夏海の笑顔はとても可愛かった。
僕は、彼女に恋心を抱いてしまったようだ。
それから、仕事が始まった。
仕事中、僕はずっと高梨夏海に目を奪われていた。
仕事が終わったあと、僕は高梨夏海と一緒に帰った。
高梨夏海)着いたで!ここが私の家だ!
神山綾斗)これからよろしくお願いします!そして家に入った。
高梨夏海)綾斗、一緒に晩飯作ろうよ!
神山綾斗)いいよ!何作る?
高梨夏海)カレーなんてどうかな?
神山綾斗)賛成!じゃあ材料買いに行こうか。
高梨夏海)OK! そう言って、僕らはスーパーに行った。
買い物を終えて、帰宅した。
僕は、料理を作る。
高梨夏海)手伝うで〜。
高梨夏海は、野菜を洗ったり切ったりしてくれた。
僕は、鍋で具材を炒めたあと水を入れて煮込む。
そして、ルーを入れたところで火を止める。
完成した。
僕は皿にご飯を盛り付ける。
高梨夏海)美味しそー! 高梨夏海が目を輝かせながら言う。
僕たちは椅子に座る。
高梨夏海)いっただきまーす! 高梨夏海は勢いよく食べ始めた。
僕は、ゆっくりと食べる。
高梨夏海)綾斗、どうしたん?ゆっくりしとらんと早う食べんと冷めるぞ。
そう言って彼女は、スプーンにカレーを乗せて僕の口に近づけてくる。
いわゆる「あ〜ん」というやつだ。
僕は、彼女の差し出したカレーを食べる。
僕は照れながらも「ありがとう」と言った。
高梨夏海)どう致しまして〜。
僕は、彼女の顔を見る。
とても幸せそうな顔をしている。その表情を見て僕は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
高梨夏海)どうしたの?私の顔じっと見つめちゃって。
僕は慌てて顔を背ける。
そして、急いでカレーを食べ終えると風呂に入ることにした。
僕は服を脱ぎ浴室に入ってシャワーを浴びる。
シャンプーを洗い流したあとに鏡を見ると、自分の裸体が映っていた。
筋肉質ではないが、痩せすぎでもない普通の体型だと思う。
髪は短めで黒っぽい色をしている。顔立ちは自分ではよく分からないが、周りからは整っている方だとよく言われる。
そんなことを考えていると、扉が開く音が聞こえてきた。
振り向くとそこには、バスタオル一枚巻いただけの姿の高梨夏海がいた。
その姿を見て、僕の心臓の鼓動は早くなった。
高梨夏海)背中流しに来たよ〜。
神山綾斗)えっ!?いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!
「ダメだって!」
僕は焦って叫ぶ。
高梨夏海)大丈夫やって!ほら、前向いて。
僕は、仕方なく言われた通りにする。
高梨夏海は、僕の髪を洗ってくれている。
気持ちいい……。
高梨夏海)はい、終わり!流すよ〜
高梨夏海は、僕の頭にお湯をかけてくれた。
高梨夏海)よし、これでOKだね! 僕は、「ありがとね」と言って立ち上がり、体も洗おうとした。
すると、高梨夏海はニヤリ「ふっふっふっ……」と笑いながら近づいてきた。
高梨夏海)私が洗ったげる! そう言って、ボディソープをつけたスポンジで体を擦ってくる。
僕は、恥ずかしくて声が出そうになるのを必死に堪える。
高梨夏海)綾斗。
神山綾斗)ひゃいっ!?ななな、何?
高梨夏海)もしかして緊張してる? 僕は黙り込んでしまう。すると……
高梨夏海)やっぱりね〜。私も初めてだからちょっとドキドキしてるけどね! 彼女は、悪戯っぽく笑う。
「それじゃあ、失礼するね〜」と言いながら、僕の股間に触れてくる。
僕は驚いて変な声を出してしまう。
高梨夏海)綾斗くんかわいい〜♡僕は恥ずかしくなり、俯いたまま何も言えなかった。
高梨夏海)ねえ、綾斗。こっち見てよ。
僕は、ゆっくりと彼女の方を向いた。
彼女の目は潤んでいた。
そして、そのまま僕に抱きついてきてキスしてきた。
僕は驚いたが、抵抗しなかった。
しばらくしてから唇が離れると、彼女は頬を赤く染めていた。
高梨夏海)好き……大好きだよ。
そう言って再び、今度はさっきよりも長く口づけを交わした。
僕は、彼女を抱きしめた。
そして、しばらく経ったあとに風呂を出た。
風呂から出たあと、僕らはソファーに座ってテレビを見ていた。
僕は、高梨夏海に話しかけた。
神山綾斗)なあ、夏海。
高梨夏海)ん?何? 僕は、意を決して彼女に告白した。
神山綾斗)俺、お前のこと好きだ!付き合ってほしい!
高梨夏海)……うん!もちろん!こちらこそよろしくお願いします! こうして、僕たちは恋人同士になった。
高梨夏海)明日、何時に仕事行く?僕は、時計を見る。時刻は午後10時を指し示している。
神山綾斗)8時半くらいかな。
高梨夏海)了解。私は、7時には起きるつもりやけん。高梨夏海はそう言って、僕の腕に自分の手を絡めてきた。
僕は少しドキッとした。
高梨夏海)そろそろ寝ようか! 僕は、「そうだね」と答える。
寝室に入った。
ベッドが一つしかないので、一緒に寝ることにした。
電気を消して横になる。
彼女は僕の方に顔を向けると、目を瞑って「お休み」と言ったので、僕も同じ言葉を返すと眠りについた。
それから数時間後、目を覚ますと目の前には天使のような美しい顔があった。
僕は驚きながらも、彼女の顔をじっと見つめる。
本当に綺麗だ……。
思わず見惚れていると、彼女が目を開けた。
目が合うと、微笑みかけてきた。
高梨夏海)おはよう。
僕は、挨拶をして起き上がる。
僕は、着替えて朝食を作るためにキッチンへ向かう。
昨日買ってきた食材の中から食パンを取り出してトースターに入れて焼く。
目玉焼きとウインナーを作って皿に乗せる。
コーヒーメーカーで二人分のコーヒーを作った。
テーブルの上に並べて椅子に座ると、ちょうどトーストが焼けたので、バターを乗せて食べ始める。
高梨夏海)美味しそうやね! 高梨夏海が言う。
僕は、照れ臭かったが「ありがとう」と答えた。
高梨夏海)そろそろ仕事に行こうか!こうして二人は職場の「埴輪食堂」に行った。
真島美月)あら、いらっしゃい!
高梨夏海)お疲れ様です! 店に入ると、真島さんが出迎えてくれた。
原崎真希)おーっす!おつかれ〜!
高梨夏海)お疲れさま〜! 原崎さんもやってきた。
真島日奈)あっ!高梨ちゃんと夏海ちゃ〜ん!おっはよ〜!
高梨夏海)おはようございます! 高梨夏海と原崎さんの会話を聞きながら、店主である僕は奥にある厨房に向かった。
今日は土曜日なので、仕込みの量はいつもより多い。
僕は、野菜の下ごしらえを始める。
高梨夏海)私も手伝うね! そう言って、高梨夏海も手伝ってくれた。
高梨夏海)これ終わったら、私も何か作るけんね! 彼女はそう言って、包丁でトントンとリズムよく玉ねぎを刻んでいく。
その姿はとても美しく見えた。
しばらくすると、彼女は僕の方を向いて言った。
高梨夏海)ねえ、綾斗。今度さ、デートしない? 突然の提案だった。
僕は驚いて、「えっ?」という声が出てしまった。
そんな僕を見て、高梨夏海はクスッと笑った。
高梨夏海)嫌ならいいけど……
僕は慌てて否定する。
神山綾斗)全然、嫌じゃないよ!ただ、びっくりしただけ。
高梨夏海)じゃあ決まりね!どこ行きたいか考えといてよ! 高梨夏海は嬉しそうに笑ってそう言い、再び料理に戻った。
僕は、高梨夏海の横顔を見ながら、デートプランを考えることにした。
高梨夏海)じゃあ私、先に帰るね! 高梨夏海はそう言って帰って行った。
僕は、店の掃除を始めた。
床をモップで拭いたりしていると、いつの間にか時間が経っていた。
僕は、休憩しようと思い、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出すと、プルタブを開けて一口飲む。
ふぅ……と息をつく。
そのとき、スマホが鳴っていることに気がついた。
電話だ。
画面を見ると、知らない番号が表示されていた。
間違い電話だろうか? 僕は、恐る恐る通話ボタンを押す。
神山綾斗)もしもし……
????)埴輪食堂を下せ。それだけ言うと、一方的に切られた。
なんなんだ? イタズラにしては悪質すぎる。
とりあえず警察に通報しようと思ったとき、また着信があった。
今度は、非通知ではなく、公衆電話からのようだ。
神山綾斗)はい、もし
??)埴輪食堂を下せ。そう言って、相手は一方的に切った。
僕は気味が悪くなり、すぐに警察に連絡した。
しかし、いたずらだろうということで相手にされなかった。
仕方ないので、店の営業を早めに切り上げて帰る準備をする。
そして、従業員のみんなに「今日はもう閉めるので、上がってください」と伝えると、僕も帰り支度をした。
次の日は僕だけ早めに店に行き準備をした。
準備している時に厨房から炎が燃え広がっていた。そこにいたのは男の人がいた。男の人は「店を下さなかったからだ」と言って逃げた。
いつの間にか周りは火の海だ。もう僕は逃げれない。
意識が薄れていく。
僕は死んだ。
目が覚めた。
ここはどこだ? 僕は辺りを見渡す。どうやら病院らしい。
看護師さんらしき人が入ってきた。
看護師さん)大丈夫ですか!?あなたは火事に巻き込まれてここに運ばれたんですよ! ああ、思い出してきた。
確か、店が燃えてそれで……僕は生きているのか。
あの時、僕は死を覚悟していたのだが。
僕は自分の手をじっと見つめる。
その手には火傷の跡が残っていた。
それから数日が経った。
貯金もあまり無い……。
退院して、自宅のベッドの上で横になりながら考える。
そうだ、バイトでも探そうかな……。そう考えているうちに眠ってしまった。
どれくらい寝たんだろうか。
誰かがドアを開ける音が聞こえてきた。
誰だろう。
まぁ誰でもいいや。そして次の日、従業員を全員呼び集めた。
神山綾斗)皆さんに大事な話しがあります。
高梨夏海)
何やろね?
真島美月)まさかクビとか?
原崎真希)それは困るわね〜。
神山綾斗)お店が燃えて復帰が出来ない状況になりました。
原崎真希)
あらら。
高梨夏海)えっ!?マジで! 高梨夏海はかなりショックを受けている様子だった。
他の三人も驚いている。
真島美月)そんな……
原崎真希)嘘でしょ!せっかく楽しくなってきたところなのに! 僕はそんな彼女たちを見て申し訳ない気持ちになった。
神山綾斗)本当にすみません。
そう言って頭を下げる。
すると、高梨夏海が僕の肩に手を置いた。
高梨夏海)綾斗は悪くないよ。悪いのは放火犯だよ。
高梨夏海は優しい声でそう言ってくれた。
僕は泣きそうになった。
神山綾斗)ありがとうございます。
高梨夏海)私はいつでも綾斗の味方だからね! 高梨夏海は笑顔でそう言った。
原崎真希)これからどうする?
高梨夏海)新しく店を立てるってのは?
神山綾斗)お金が無いです。
高梨夏海)そっか……
高梨夏海の言う通り、新しい店を作るという選択肢もあるかもしれない。
だが、今の僕にはとてもそんな余裕は無い。
それに、僕はこの店が好きだったのだ。
真島美月)「埴輪食堂」が無くなるなんて嫌よ!絶対嫌!
原崎真希)そうよ! 二人はそう言って反対してくれた。
僕は嬉しかったけど、同時に悲しくもあった。
高梨夏海)私も嫌よ!絶対に嫌!! そう言って、高梨夏海は泣いていた。
僕は彼女の涙を見て、胸が締め付けられるような思いになる。
僕は彼女に何も言えなかった。
神山綾斗)僕だって辛いですよ。だけど、仕方がないんです。
結局、僕はこう言うしかなかった。
原崎真希)じゃあみんなでお金を出し合えばいいと思う。
神山綾斗)みんなで出し合うか。
確かにそれならなんとかなりそうな気がしますね。
高梨夏海)そうね!みんなで頑張ろう! 僕は、みんなの優しさに感謝した。
こうして、僕らの店の再建計画がスタートした。
まずは、どんな店にするのか決めることにした。
僕は、テーブル席とカウンターがある店をイメージした。
高梨夏海)やっぱり和風が良いよね。
神山綾斗)そうですね。
僕も和風の店の方が好きだ。
高梨夏海)あとは、メニューも考えないとだね。
神山綾斗)そうですね。
それから僕たちは話し合いを続けた。
料理のレパートリーはたくさんあった方が良いということで、色々と考えることにした。
和食、洋食、中華、イタリアン、フレンチなど、色々なジャンルの料理を試すことになった。
また、デザートなども作ることになった。
僕は、ケーキやパフェなどのスイーツ類を作ったりしていた。
そして、数ヶ月後……遂にオープンを迎えた。
高梨夏海)いよいよだね!
原崎真希)早く来ないかしら〜。
真島美月)楽しみね! 従業員の皆さんは、かなり緊張しているようだった。
開店まで残り数分となったとき、お客さんが来たようだ。
お店の前には行列が出来ていた。
僕は、みんなに声をかける。
神山綾斗)みなさん準備は良いですか? 僕はそう聞くと、みんなは「はい!」と答えた。
そして、ドアを開ける。
カランコロン♪ ドアを開けると、店内には心地よい鈴の音と、明るい照明が灯っていた。
僕はゆっくりとドアを閉める。
そして、深呼吸をして息を整える。
そして……
神山綾斗)埴輪食堂へ、ようこそ!
埴輪食堂 不動のねこ @KUGAKOHAKU0
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