今年も、桜を。また、桜を。

今年も、桜を。また、桜を。

何回死にたいって思っただろうか。

色々あったと思う。例えば、花瓶を壊してしまったときとか。例えば、友達に「お前消えろよ」って言われたときとか。

何回も何回も死にたいって思った。

例えば、テストで12点取ったときとか。例えば、リレーでバトンを落としてしまったときとか。

皆は「そんなぐらいで落ち込むな」って言ってくれる。

こっちの気も知らずにさ。多分それは間違ってないんだろうけど。

何回も何回も何回も。

でも、なんかまだ生きてる。

今年も、桜が咲いてるのを見てる。

受験が死ぬほど辛くても、なんだかんだ通り過ぎて、死なずにまたこの公園に来ている。

自分でも何故か分からない。

死にたいなら死ねばいいのに。でも、

……でもまだ死んでない。死ねていない。

もしかしたら自分は死ぬのが怖いのかもしれない。

死ぬよりももっと怖いものを沢山見てきたつもりなのに。

……あぁ。また自分はダメみたいだ。

いつだって何も上手くできないのに、死ぬ時すらままならない。

いつだってダサいまま、どこにも行けずぼやけたまま。

……あぁ。桜の花は綺麗だ。

いつだって自分だけで何もできないのに、何回でも足掻いてしまう。

いつだって何かに甘えたまま、何かのせいにしたまま。

いやだ、って全て投げ出してしまえば。濁った灰色は、薄くなって、溶けて、透明になるのに。

でも気付いたら桜色が浮かんで。

「また見たいな」って思ってて。

多分来年もここにいる。

何回も何回も何回も何回も死にたいって思って。

けれどまたここに戻る。

言い方を変えれば、臆病だからここにいられるのだろう。

死にたいけど死ねないから、ここに戻れるのだろう。

こんなに美しい桜が見られるなんて、どんなに役得だろう。

……あぁ、死にたい自分になんて言い訳しよう。

「死ぬのが怖いです！」

それで十分じゃないないかなぁ。

「また桜を見たいです！」

これでもいいかもしれない。

死ねない理由なんて、別にこんなもんでいいかもしれない。

じゃあ自分はたぶん死ぬまで無敵なんだろう。

マリオで言うスター状態。

ここに戻れる限り死ぬまで死なないから。