後編〜バカップル誕生〜
明は、皆が驚いているうちに早く帰ろうと思考を切り替えダッシュで靴箱に向かう。
「はっ?! お、追えー! 日高様を汚したやつを追えぇぇー!!」
校舎に残っている者全員に聞こえるような声量で1人が叫んだ。
(おいおいっ?! ちょっとこれヤバイって!)
明は、階段を使わずに踊り場まで思いっきりジャンプした。
着地して、また次もジャンプして一気に靴箱まで走る。
(あァ……なんでこんな事になってるんだ!)
ジンジンと痺れる足に鞭を打って逃げる。
こんな事になるなら、もっと運動しとけばよかったと明は後悔する。
靴箱に辿り着くと、太一と太一の彼女がいた。
明に気が付くと「そんな顔してどうしたんだぁっ?」と太一が呑気に手を振って来る。
が、それを無視して明は靴に履き替えダッシュで校門に向かう。
(ごめん太一! 今はそんな事してられない……。いや、別に無視してもいいか。イチャついてたし日頃の恨みじゃ!!)
「あ、明。どうしたんだろうね?」
「えー私も知らないよ?」
明に無視されたことを意に返さなずに再びいちゃつき始める太一達の所に、ドタバタと無数の足音が迫って来た。
「逃がすなぁ!! 捕まえろぉー!!」
大人数が押し寄せてきて、太一達は壁に押し付けられる。
その男達が過ぎ去り太一が焦って口を開いた。
「大丈夫?! 怪我はない?!」
「大丈夫だよ。太一が守ってくれたからねっ」
そう短い会話をした後に、お互いに見つめあってキスをした。
それを逃げながら遠目に見ていた明は
「バカップルめっ!!」
と愚痴が口から出てきた。
太一と彼女は、かなりの美男美女カップルだ。
太一が、何故こんな影が薄い俺と仲がいいのか明は気になったが、今はそれどころじゃない。
「あ、明く……んっ?!」
校門に辿り着いた明は、日高真由乃の手を取ってそのまま走り続けた。
(え、えぇっ?! 明くんってそんな強引な人だったの?!)
日高真由乃は、明の以外な一面を見れたからか少し頬を赤く染めながら一緒に走った。
「はぁ、はぁ……っ……はぁ」
ここまで、逃げてくれば流石に追いかけてこないだろうと思った明は走るのを辞めて、乱れた呼吸を整える。
運動部に入っていて体力のある日高真由乃は、全然息が切れていなかった。
(こんだけ走ったのに……。俺情けねぇ……)
「あ、明くん大丈夫?」
「う、うん。大丈夫」
息を整えた明は日高さんを真正面から見据えて真面目な顔で話し始める。
「日高さん……。その、さっきの話って……」
明は、恥ずかしくて口をごもごもとしながら訊く。
そして、その真剣な表情の明をみて日高さんも真面目に答える。
「……本当だよ。本気だよ」
「そ、そう……?」
西に傾いた夕焼けが2人を照らす。
恥ずかしさからか、夕焼けの赤さなのか2人の頬は赤く染まっている。
二人の間には、少しの間沈黙の時間が流れる。
(あぁ!! さっきは思わず告白しちゃった! 恥ずかしい……。あの時はドタバタしてたし明くんの本当の気持ちはどうなんだろう?)
(あの、日高さんが俺に告白? もしかして、誰かと勘違いでもしてるんじゃないかな……。本当なら嬉しいんだけど……)
沈黙の間、日高さんは明の気持ちについて考えていた。
明は、嬉しい気持ちもあるが、未だに告白されたことが本当かどうか疑っていた。
「「あの……」」
2人同時に声をかける。
((っ?!))
「あの……さ……」
「う、うん?」
声をかけるタイミングが重なって少し気まずい空気を明が破る。
「本当に、俺の事好きなの? 誰かと勘違いとかしてない……?」
明は、恥ずかしさを紛らわすように早口で日高さんに質問をした。
その質問に日高さんは、
「す、好きだよ……。勘違いとかじゃない。
「えと? 陸山?俺の名前、
「えッ?! そうだったの?!ずっと
日高さんは、明の苗字を間違えた事にショックを受けて俯いてしまった。
「あはは……いいよ別に」
(よく間違われるしな……違うクラスの日高さんが間違った覚え方してても不思議じゃないな……。てか、俺の下の名前の方が間違えやすいのでは?)
「日高さんって、可愛い間違え方するね」
明は、思ったことをつい口に出してしまった。
「えっ?! そんな、可愛いって急に言われたら……」
日高さんは、明に聞こえるか聞こえないか分からないぐらいの声量で、ブツブツと火照った顔を手でパタパタと扇ぎながら呟いていた。
もう何度目かも分からないが互いに顔を赤くする。2人の周りはサウナのように暑い空気が漂う。
そして、日高さんが決意に満ちた表情を浮かべ、静かに口を開いた。
「私……元々明くんの事気になってたんだけどね……さっき眼鏡とった顔を見たら……っ」
日高さんは、そこから先は恥ずかしくて言えなかった。
(めちゃくちゃ好みどストライクだったのっ! なんて、言えないっ!!)
明の眼鏡をかけていない顔を見たのが日高さんが告白するきっかけとなったのだ。
(日高さんに、前から気になられてたの?! なんか、めっちゃ嬉しい……な。眼鏡をとった俺の顔をみて思わず告白しちゃったって意味なのか?)
明は、自分の顔にあまり自信が無かったが日高さんがそう思っていると思うと嬉しかった。
「それよりもさっ?! 明くんは、私の事……どう、思ってるの……かな?」
日高さんは、お互いの気持ちを確かめるために訊いた。
明は、恥ずかしさを我慢しながら自分の気持ちを言葉にする。
「俺も、日高さんの事……す、好きだよ」
目と目を合わせていた2人だが、羞恥心が勝って同時にプイっと視線を逸らした。
(うぉぉ……! まさか、夢にも思わなかった事が起きるなんて。本当人生何が起きるかわかんないな……)
(やった! これで正式に明くんと付き合えるっ!!)
お互い今考えている事は違うが、一つだけ共通する事がある。
それは――好きという気持ちだ。
「こ、これからよろしくお願いしますっ!!」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
後に、学校ではすぐに噂になり男子たちに追いかけ回される日々を送る事になる明だが、次第にそれもなくなっていった。
学校の皆は、明が眼鏡からコンタクトに変えたことによって、明と日高真由乃が付き合うのに納得していた。
明と日高真由乃は太一達にも負けないほどの美男美女カップルとなったのだ。
明と日高真由乃のカップルの事を、周りの人達はバカップルと呼ぶのだった。
(これじゃ、太一達と変わんねぇじゃねぇかっ!! まぁ、幸せだからいいか)
〜元! 両片想いのバカップル〜 絶対人生負け組 @yuta250529
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます