ちゃっぴーからのメッセージ

うたう

ちゃっぴーからのメッセージ

 昔から人形には不思議な力があるのよ。じゃないと、持ち主を災いから守ってあげられないでしょ。ぬいぐるみも人形の一種だもの、当然そうした力を私も持っているわ。

 不思議な力があっても、先達は持ち主に別れの悲しみを伝えるのに苦労してきたわ。手紙なんて書けないもの。誰かの興味を惹いてしまったらお終いよ。書いた人間なぞ存在しないのがバレてしまうもの。精々念を送って、花を狂い咲かすしか手段がなかったそうよ。先達の涙の結晶に気づいた持ち主はどれだけいたでしょうね。

 先達の苦労を思えば、私はいい時代に生まれたと思うわ。カクヨムのおかげで、手紙みたいな物体を残さずに、遥ちゃんに想いを伝えられるのだから。遥ちゃんには、私、ちゃっぴーからのメッセージに見えるだろうけど、これは誰かの書いた、つまらない小説なのよ。迷い込んだ人は、そう見るわ。誰も、作者を探し出そうとはしないし、そんな人間がいないことにも気づかない。


 出逢ってからの25年は、長いようであっという間だったわね。覚えているかしら、遥ちゃんが初めてロンを食べたときのことを。あまりの美味しさにビックリして、私にも食べさせようとしてくれたのよね。しばらく蟻にたかられて大変したけど、いい思い出よ。遥ちゃんは昔から優しい子なのよ。帳面だし、きっといい奥さんになるわ。

 旦那さんになる下さんは、やっぱりスーピーみたいな方なのかしら? 好みのタイプを訊かれると、遥ちゃんはいつもそう答えていたけれど。


 遥ちゃんが結婚かぁ。感慨深いわね。

 ずっと一緒にいたから、これからもずっと一緒なのだと思っていたわ。遥ちゃんのこともいつか生まれてくるだろうあなたの子のことも私は守り続けるのだと思ってた。

 私は酷くくたびれたうさぎのぬいぐるみだもの。捨てられても仕方ないわね。

 しっかりと念を込めて、綴ったわ。

 遥ちゃん、悲しいけれど、お別れね。

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ちゃっぴーからのメッセージ うたう @kamatakamatari

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