ふわふわ

澤崎海花(さわざきうみか)

ふわふわ

 森の中を歩いていると、急に鼻先を擽る甘い匂いが漂って、立ち寄る予定もなかったのに恐る恐る木造のドアを押した。


 看板に書かれている文字は『ご自由にお入りください』だった。


 その隣には可愛い動物の絵が書かれている。


 木造の室内へと入ると、切り株のようなバームクーヘンや、四角いチョコレート菓子が並んでいた。


 室内を見て回りながら、奥の部屋を覗き込む。


 そこには、小さなぬいぐるみ達が一生懸命に料理をしている姿があった。


 うさぎやくまのぬいぐるみは、ホールケーキに飾り付けをしている。


 リスのぬいぐるみは、紅茶を入れていた。


 他にも様々な動物のぬいぐるみが忙しなく働いている。


 その様子に夢中になっていると、うさぎのぬいぐるみと目が合った。


 うさぎのぬいぐるみは、ホールケーキを切り分けて私に差し出すように動いている。


 ドアをゆっくり開けて、それを受け取ると、一切れのケーキに『誕生日おめでとう』と書かれていた。



 そうだ、今日は私の誕生日だ。



 お礼を言ってそれを受け取ると、ケーキは私の好きな物ばかりが乗っていて直ぐにかぶりついてしまった。


 ケーキを飲み込むのを見て、リスのぬいぐるみが紅茶を差し出してくる。


 それを受け取って飲み干すと、ぬいぐるみ達は新しい食事をどんどん準備していた。


 ぬいぐるみから視線を離して上を見上げると、そこには『誕生日パーティ、由美ちゃんおめでとう』と暖簾が下がっていて、手で口を塞ぐ。


 ぬいぐるみ達は私を祝ってくれているようで、感動で胸がいっぱいになる。


 スウと息を吸い込んでぬいぐるみ達に対して声をはりあげた。


「ありがとう、私のーー」


 ぎゅうぎゅうと抱き枕を抱きしめながら、寝言でありがとうと繰り返す。


 とっても幸せな夢を見ているのを邪魔する者は一人もいない。


 布団の上で幸せそうに眠っていると、周りの棚に飾られているうさぎ、くま、リスなどのぬいぐるみがカタンと動いた。


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ふわふわ 澤崎海花(さわざきうみか) @umika

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