殺し屋少女とヌイグルミ

kou

殺し屋少女とヌイグルミ

 高級車フェラーリが、法定速度を無視した速度で走っていた。

 運転するのはサングラスをかけた長身の男だ。

 後部座席は広く、そこに座る男は大柄だった。

 その大男が、ニヤリと笑う。

 男の名は、デイブ・ジャマルという。

 中東系の顔立ちで、浅黒い肌をしていた。

「やっぱりシャバの空気はうまいぜ」

 そう言ってから、デイブは煙草をくわえた。

「日本の司法なんてチョロいもんだな。ハンセイシテマス。で執行猶予つけて終わりかよ。まあ、オレみたいなヤツにはありがたいけどな」

 彼は日本に来てまだ一年しか経っていないが、すでにいくつもの強盗、強姦、窃盗事件を起こしている常習犯だ。

「まったくでさ」

 運転する若い男は同意し、次の瞬間急ブレーキを踏む。

 ヌイグルミを抱えた小さな女の子が飛び出したのだ。

 車はタイヤを鳴らして止まった。

 運転手はドアを開けると、少女に向かって怒鳴った。

「死にてえのか!」

 少女は、その場に怯えたようにへたり込んでしまう。

 デイブと運転手は激昂して車を降りる。

「幼女か。このまま売り飛ばすか」

 少女は震えていた。ウサギのヌイグルミを両手で抱き泣くだけだ。

 運転手が少女の腕を掴む。

 無理矢理立たせようとした時だった。

 乾いた銃声と共に、運転手の胸から血飛沫ちしぶきが上がった。

 そのまま倒れ込む。

 デイブは呆然とした顔になった後、少女を見た。

 その手には、自動拳銃オートマチック・ベレッタナノを両手で握っていた。

 武器など持っていなかったハズだ。

 見れば転がったヌイグルミの背が割れていた。

 察する。

 少女は微笑んでいた。

 それは、彼が今まで見たことがないほど美しい笑顔。

 デイブは恐怖を覚えた。逃げ出そうとしたが、二発の銃弾が彼の両膝を撃ち抜いた。

 悲鳴を上げる。

 デイブは必死になって懇願した。

 命乞いをした。金ならいくらでも払うと言った。

 しかし、少女は冷徹な目で見下ろす。

「反省は。地獄でして」

 少女は男の眉間を正確に撃ち抜いた。

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殺し屋少女とヌイグルミ kou @ms06fz0080

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