如月弥生、殴打!(KAC2023②ぬいぐるみ)
風鈴
如月弥生、ド突く
新学期が始まり、初々しい高校一年生となった黒髪ロングの聖女、如月弥生は、ふとした事で赤い本を手に入れた。
その赤い本には、六芒星のマークが。
手に入れた日の夜、弥生は夢を見た。
♢
『三郎様はお優しいけど、新九郎がアレでは最早これまで』
私は、城の一室から月を見上げながら独り言ちた。
謝ればまだ許してくれる!
私は、その確信があるにも関わらず、あの人(新九郎)を説得できなかった。
武士の意地?
新九郎の器は小さい。
それは分かっていた。
六角を破ったのも、自身のチカラなどではない。
それを勘違いしたところに、新九郎の愚かさが知れるというモノ。
それに、私との婚儀に三郎様のお金を使わせるなんて。
だから私は、あの人を新九郎と呼び捨てにして来た。
長政なんて名前、三郎様には悪いけど、名前倒れも良いとこよ。
ただ、子供を作る才能には恵まれてたわ。
可哀想な我が子達…。
特に、私のお腹の子は、絶対に死なせたくない!
もうすぐ秋。
総攻撃の日は近いわ。
三郎様、秀子はいったいどうすれば…。
♢
「う~~ん…」
弥生は目を覚ました。
――――夢?でも、リアル過ぎる。わたし、まだ夢で見たお月様を覚えてるわ。
弥生は、今見た夢を調べようとスマホを見ると、午前7時30分だった。
「あ~~、ヤバい!」
急いで着替えて、スクールバッグに今日のテキストやノートを詰め込む。
――――って、いつも寝る前に準備してるハズなのに、わたし、昨夜は何してたっけ?
その時だった!
『קֹדֶשׁ, קָדוֹשׁ, קִדּוּשׁ、הוא שם סתום במקרא המופיע בספר ויקרא בהקשר למצוות שילוח השעיר』
「えっ?なに?」
『הוא שם סתום במקרא המופיע בספר ויקרא בהקשר למצוות שילוח השעיר』
「だから、なに?」
『無学なる徒よ!汝、何時かも知らぬとは!くっくっくっく!これ、名言、言っちゃった?』
「最初から日本語で言いなさいよ!って、そこじゃない。誰?姿を現しなさい、この悪魔め!!」
『小娘のクセに、我を見破るとは!』
――――あ~めんどくさ!思い出したわ、昨夜のこと。
「元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を
『ククククク、ズィーゲルか~~!!甘いな、こむす』
「ハッ!!」
ドガッ!バキィ!ゴギン!
弥生は、すぐさま拳を叩き込んだ!
「ふん!」
弥生は殴打による封印術を施すと、さっさと階下へ降りて行った。
ベッドには、片耳が折れ曲がったピンクのウサギちゃんのぬいぐるみがぐったりと横たわっていた。
♢
その日の授業が終わり、放課後になった時のこと。
「副委員長~!ちょっとさあ、部活があるからどうしてもムリなんだよね。代わりに行ってくれる?」
弥生の前に座っていた、ガタイの良い男子が話しかけてきた。
「
「副委員長~、そこをなんとか!この前は行ってくれたじゃん!」
「二度目は無いと言ったハズですが?」
「聞いてねーよ!だいたい、委員長の補佐を務めるのが副委員長の義務だろ!」
「なにか、勘違いをしていませんか?」
「うん?」
「副委員長は、委員長のシモベでもなんでもありませんから」
「ちっ!なんだよ!エラそうにしやがって!おまえ、聖女とかじゃねーのかよ!優しい聖女様ってのはウソだったのか?」
『長月って、怒るとヤバいみたいだし、止めようよ、もう、弥生』
隣りに居た皐月が耳打ちをする。
「わたし、聖女なんかじゃありませんから!急いでるので、もう帰ります」
「ちっ!おいおいおい、帰っちまうじゃねーかよ、お前のせいで!」
耳打ちをした皐月のせいだと勘違いした長月が皐月の肩をド突いた。
「キャッ!」
皐月が倒れた。
振り返ってそれを見た弥生は、長月の元へ歩み寄った。
「このバカ!」
「パチーーン!!」
弥生は、長月の頬を平手で張った。
いい音がした。
了
如月弥生、殴打!(KAC2023②ぬいぐるみ) 風鈴 @taru_n
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