ハードボイルド・テディ【KAC20232】
あきのりんご
ハードボイルド・テディ
俺は秘密組織の工作員だ。
仕事内容は要人の警護、諜報活動、暗殺と多岐にわたる。
爆弾や銃撃を受けることが多く、身体の一部を失う度に機械化していたので今では身体の半分以上が機械になっている。
凄腕工作員として名を馳せたので、クライアントだけでなく俺自身が狙われることも多い。
今回は本当にミスった。
事前情報に間違いがあり、テロリストの自爆テロに巻き込まれたのだ。
おかげで体のほとんどを失い、脳以外のすべてを機械化するしかなくなった。
「本当にいいのね」
組織の専属医師であるユミが、手術台に乗せられた俺に囁く。
彼女には世話になりっぱなしだ。
脳以外すべて機械の体になるというのは、前例がほとんどなく成功率もかなり低い。
でも、ユミの頭脳と腕ならそんな手術もきっと成功する。
「愛してるわ」
俺も愛しているよ、ユミ。
君を守るためにも俺は死ぬわけにはいかないんだ。
そして麻酔をかけられ、俺の意識は徐々に遠くなっていった。
どれほど時間が経っただろう。
何年も眠っていたような気もするし、ほんの一瞬目を閉じていただけのような気もする。
「目が覚めた?」
ユミがこちらを覗き込む。
「手術は成功よ。起き上がってみて」
言われるまま、俺は体を起こしてベッドから降りた。
……うん?
おかしい。視界が低い。ベッドの位置がやけに高い。
病室内の家具や家電がやたら大きく見える。
「感覚はおかしくない?」
「おかしくはないが……」
いや、おかしい。
なんで俺は彼女を見上げているんだ?
彼女は俺を持ち上げるとギュッと抱きしめた。
「ああ、なんてモフモフで気持ちいいの」
俺は病室の窓に映る姿に驚愕した。
彼女が抱きしめているのはかわいらしいテディベア。
これは……俺か⁉
すると彼女がそっと耳打ちする。
「組織内に裏切者がいるわ。あなたはぬいぐるみの姿で敵を油断させて探ってちょうだい」
まさかテディベアの姿で諜報することになるとは。
ハードボイルド・テディ【KAC20232】 あきのりんご @autumn-moonlight
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます