ぼくの学校
@mogura0708
プロローグ 違和感
「ねえ、どうしてぼくは勉強しているの?」
「どうしてと言われても……。これが国の定めたルールだから……」
「そんなこと言われたって、納得できないよ」
ぼくは勉強ができないわけではない。むしろ、勉強ができると言われていた。ぼくららは小学校1年生だけど、ほとんどみんな9歳だ。そもそも、少し前までは3年生だった。しかし、日本の授業の仕方が見直されて、その時小学校3年生までの人たちは新しい方法で1年生からやり直すことになった。
「だってぼく、この解き方知ってるもん。それに――」
そう言って床を見ると、ARで映し出された金魚が、足下を泳いでいる。その光景を見ていると、急に周りがぐらついた。
「大丈夫?! すぐに保健室に連れて行くからね!」
先生はクラスの皆におとなしく待っているように言うと、ぼくを抱えて教室を出た。
*
私もおかしいとは思っている。今まで教育制度を変えていても「やり直し」は起こることがなかった。それどころか、急な授業用デバイスの追加に各職種の特権、法務省に「公安調整庁」の追加など、社会システムの一新までもが起こってしまった。
「■■■■■■■■■■■■■■」
教師の特権の1つ「仕事への不満が漏れない」が働いている。実際に発しているはずなのに喉の震える感覚が無い。職場で、どんなに不満を叫んでも子どもに聞こえないこの特権はとても便利だった。しかし、それと同時に――。
「どうしたんですか、
声の方へ顔を向けると、この学校の養護教諭である
「またこの子が倒れてしまって」
「また
「そう思いますね。引き継ぎ資料には『繊細』なんて無かったですし、制度変更前は特にこういった様子は見られなかったのですが」
「そうですね、今まで保健室によく連れてこられる子じゃなかったし、お休みもほとんどなかったし……。とりあえずベッドに寝かせて様子を見ておきますね、戻れそうなら教室へ戻しますので」
「分かりました。よろしくお願いします」
私は碧依くんを預けると、教室へと戻った。
*
また、ぼくは倒れたのか。いつもこうなってしまう。ARがダメなわけじゃない。でも、ARで映された物を見ているうちに勉強に疑問をもち始めて、そして目の前が回り始める。頭が真っ白になって、汗が出てきて、座っているのがとても辛くなる。
「古茂田先生、ぼくもう大丈夫。教室戻りたい」
先生に声を掛けると、開けるね、と優しく言ってから先生がカーテンを開けた。
「まだ汗かいてるみたいだけど、平気?」
「うん、いつものことだから大丈夫」
ぼくはなんとか笑ってみせた。
「うーん、勉強は問題ないって先生から聞いてるし、無理しなくてもいいんだよ?」
「それより、教室の友達と遊びたいんだもん。大丈夫だってば」
先生はちょっと何か言いたげだったけれど、少し考えるような顔をしてから、教室に戻っていいよと言ってくれた。
「失礼しました」
ぺこりと頭を下げると、ぼくは教室へと戻った。
ぼくの学校 @mogura0708
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