ぬいぐるみボン

KKモントレイユ

くまのぬいぐるみボン

 僕は倒れてしまった。僕はお母さんと病院に行き、すぐに入院することになった。

「今夜がヤマです」

先生が廊下で言うのが聞こえた。『そんなに悪いのだろうか?』確かに目が回りそうだ。お母さんは病院に泊まってくれるという。夜になっても息苦しい。


 部屋に女の子が入ってきた。

「これ、お守り。くまのボンよ」

と言って『くまのぬいぐるみ』をくれた。

『変なくま』と思った。足が短いんだ。手も短い。少し汚れてるのも気になった。でも優しい顔をしてる。

「ありがとう」

僕は女の子に言った。

女の子は嬉しそうに自分の部屋に帰って行った。


 その夜、僕はますます苦しくなって息をするのもやっとだった。怖い夢を見た。夢の中で大きな犬に追いかけられた。僕はくまのボンと一緒に必死になって逃げる。

 突然、ボンが僕の手からするりと抜けて喋った。

「君を助けてあげるよ」

ボンは、その大きな犬の鼻を殴った。犬は驚いて転んだが、すぐ起き上がってボンにかみついた。ボンの足がちぎれそうになった。でもボンは勇敢に戦った。もう一度、犬の鼻を殴ったんだ。犬は転げて鳴いた。

「あの扉の向こうに逃げるんだ」

ボンが言った。扉の向こうに光が見えた。僕は走った。あと少しのところでボンが転んだ。

「ボン!」

「僕はいいから扉の向こうに行って」

ボンをおいて行けない。犬がボンに飛びかかってきた。

僕は勇気を出して犬を殴った。犬は転げて逃げていった。僕はボンを抱きしめて扉を開けた。


朝日がまぶしい。

お母さんが優しく僕の顔を覗き込む。

先生が

「もう大丈夫だよ」

と言った。僕は足のちぎれかけたボンを抱きしめていた。

「そのぬいぐるみ……」

先生が不思議な顔をした。

「隣にいた女の子が大事にしていたぬいぐるみだよ」

ぼくが

「返さなきゃ」

というと先生が

「その子は、今朝、天国に行ったんだ」

と言った。僕はボンを抱きしめた。

僕はボンを抱きしめていっぱい泣いたよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぬいぐるみボン KKモントレイユ @kkworld1983

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ