病気がちな少年少女の邂逅。彼がぬいぐるみを手放せない理由とは。どこか達観したかのような二人の会話は、淡々としていながらも心地よく、心にしみ入ります。交流を深めるうち、激しい感情はないかもしれないけれど、お互いを大切に思い始める……最後まで読んで、タイトルの意味を噛み締めて、胸が締め付けられます。とても素敵なお話でした。
多感な青春期、病院暮らしの多かった二人にとって、気の合う入院仲間がいることは、目に見えない希望でもあり、日々の楽しみでもあるように思いました。他の子たちよりも死に近いところにいる二人が交わす言葉は、掴みどころのない哲学的なものばかりで、この言葉のキャッチボールで、埋められない何かを埋めようとしているのが印象的でした。青春期の思い出は歳を重ねるごとに深く愛しく心骨に根付いていくものだと思います。自分の人生の中で、忘れがたい大切な人はいたかなと、じっくり考えたくなるお話でした。