最終話 陽はまた昇る

19時00分

戦場となった先島・尖閣・東シナ海の現場レベルでの戦闘は「人民解放軍の降伏」という形で既に終結していたため、今後は日中両国の政府レベルでの交渉となった。


8月29日以降、日中両政府はイギリスの仲介の下、中立的立場を表明していたシンガポールで停戦交渉にあたった。


しかし、交渉はすぐに暗礁に乗り上げる。

人民中国政府はなおも徹底抗戦の構えを示し、沿岸部に稼働可能な戦闘機や攻撃機、爆撃機を集結させたほか、寧波ニンポー広州コウシュウの艦隊に出動準備をさせ、しまいには核兵器の使用をもほのめかす始末であった。


対する日本政府も、一歩も引かない姿勢を見せ、弾道ミサイルによる日本本土への攻撃の報復として人民中国への更なる経済制裁、上海シャンハイなどの沖合に展開している原潜からの巡航ミサイルによる軍事基地や都市部への攻撃、最終手段として大陸間弾道ミサイル「あすかⅢ」での攻撃をも示唆した。


翌30日、31日になっても交渉は平行線を辿り、このまま停戦交渉が決裂するかと思われていた。


しかし9月1日、状況が一変する。


前年の2014年に発生した「雨傘革命あまがさかくめい」時に、人民解放軍の武力弾圧によって犠牲となった学生や民間人の追悼集会と、なおも続く第二次日中戦争に対する反戦運動を香港の治安当局が武力で鎮圧しようとした。


当然ながらデモ隊は反発、そして事態が急速に悪化していき、一気にデモ隊と香港警察との間で武力衝突に陥った。


また、これに触発されたのか、新疆シンキョウウイグル自治区・東トルキスタンといった独立運動の盛んな地域、更には青島チンタオ天津テンシン重慶ジュウケイ成都セイト西安セイアン南京ナンキン武漢ブカンなど各都市で反戦・反政府デモが行われ人民中国は広範囲で機能不全に陥りかけていた。


また、日本国内でも人民中国同様に反戦デモが全国的に発生し国会前では20万人規模でデモが行われた。


さらに、日本円が1ドル70円台まで下落したことから国内経済に大きな被害が出始めていた。

さらに人民元は日本円よりも下落、甚大な被害を及ぼしていた。


また、日本と人民中国の極東の2大国が戦争状態であったためアジア経済、ひいては世界経済にも大きな影響が出始めていた。


このことから国内外の混乱を早期に収めるために日中両政府は歩み寄りを始め、9月5日には大筋合意に至った。


その後9月7日、日中両国は停戦に合意。

翌9月8日正午をもって同停戦条約が発効、ここに第二次日中戦争は終結した。



この小さな島々を巡る戦いで日中両軍は大きな被害を被り、先島諸島では民間人犠牲者も確認された。


この戦争で得たものはなんだったのか…失うものばかりで得たものなどないのかもしれない……

答えは「世界」という混沌の海だけが知っている。



~[完]~

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第二次日中戦争~日中機動艦隊激突す~ JSSDF @JSSDF

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