神様になったぬいぐるみ
にゃべ♪
旅をするぬいぐるみ
僕はコアラのぬいぐるみ。ゆまちゃんちのぬいぐるみ。彼女は僕を公園に連れ出して、そのまま忘れて帰ってしまったんだ。お迎えがくるのを待っていたら、僕は知らないおじさんにさらわれてしまった。
おじさんは僕を連れて世界中を飛び回って各地で写真を撮る。色んな所に行ったよ。大都会も地方都市も、南の国も北の国も、アジアもヨーロッパもアフリカも。その写真はとても人気になっていたみたい。
最初は素朴だったおじさんはいつの間にかお金持ちになっていて、それは僕のお陰だって言うんだ。気がつくと僕は祭壇に祀られていて、毎日誰かの願いを聞くようになっていた。
僕は何もしていないのに。僕は何も出来ないのに。それでも僕の所に来る人の数は日に日に増えていく。
祭壇には収穫された作物が供えられる。待ってよ、僕食べられないよ? 他には大小様々なお菓子も供えられる。お菓子を出されても困るよ。他にも新鮮なお魚とか、お肉とか、卵とか……でもそう言うのはまだいいよ。だから、鹿の生首とかやめて欲しい。
僕に神様なんて宿らないから祈るのは止めてね。みんなの前でおじさんが言っている僕からの神託なんて嘘だよ。僕は何も言ってないよ。難しい事は分からないよ。
僕はただ飾られているだけなのに、どうして日に日に信者が増えちゃってるの?
僕はただのぬいぐるみ。大量生産のコアラのぬいぐるみ。何も特別じゃないんだ。崇められるために作られたんじゃないんだ。
祭壇でぼんやりしている僕の上空に光が射してくる。気がつくと僕の目の前に宇宙人がいた。肌の色は赤くて、見た事のない服を着ていて、雰囲気も地球の人と全然違う。どうやら僕は目の前の彼にさらわれたみたい。
赤肌の宇宙人は僕を抱きしめて遊んでくれた。友達のように扱ってくれた。そうだよ、こうされたかったんだよ。だから僕は今とても嬉しいんだ。愛してくれるなら誰だってどこだって。
神様になったぬいぐるみ にゃべ♪ @nyabech2016
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