第60話 第2章 開戦 27
危険を避けながら、俺のできる範囲で最大限の効果を得ることが目標だ。グランガイズのために全てを捧げるのなら、この場で巾着に入っているスーツケースを取り出し、ノートパソコンに保存されている情報をすべて公開してしまえば良いだけだ。南井爺ちゃんの部屋で集めて保存した情報は、国連加盟国193か国の地図、人口、基本軍事規模、外交関係、軍備などが含まれている。あとは確定ではないが、各独立勢力の所在や軍備、人数なども調べてある。特に俺の転移先で敵になるはずの日本のデータは特に念入りに調べてある。
しかし、この情報は俺の最大の武器でもある。俺が知っている情報をすべて渡し、スーツケース2個に入っている道具類をすべて渡してしまうと、俺は用済みになってしまうだろう。俺がどれだけの情報や道具を持っているのかは6神ならお見通しだろう。全てを出し切った俺については、6神から教団に伝達されるはずだ。
そうなったときの俺の価値は0とまでは行かないが、ほぼそれに近くなっているだろう。俺はそうならないように、ここぞと思う場面で有効な情報を出すべきなのだ。俺がどのような情報を持っているのか、6神が知っているのだから、情報を出し渋ってグランガイズが不利になってしまえば、俺への期待は不審に変わるだろう。なので常に連絡を取り合って、時期を逃さないように配慮しなければならない。
「ユグ殿、ラーテイに伝えられた情報の地球の人口が80億人で、1年ごとに1億人ずつ増えていると言うのは事実なのですか?」
「それは事実です。また、人族が戦う中東・アジア・オセアニア地区には、14億人以上の人口を抱える国が2つ存在することも事実です」
俺の言葉を聞いて、教皇と両枢機卿以外の教団の人々が騒然となった。幹部たちは知っていたかもしれないが、それ以外の教団員にとっては初耳の情報だったようだ。
「ユグ殿、我々から聞いた情報を外部の者に漏らさないと大神に誓えるかね?」
「もちろん、誓えますが、もっと手っ取り早く契約魔法とかないのですか?」
「ユグ殿には真偽判定や契約魔法、隷属魔法などは効かないようです。なので、重大な罪を犯した場合、長期刑を科すのが無理となり、死罪になる可能性が高いことを覚えておいてください。」
「分かりました。心に刻んでおきます。」
「それでですが、我々人族の総人口なのですが4億8千万人を超えた所なのですが、敵対する地域の総人口はどれくらいなのかな?」
私はパソコンにダウンロードするときに開いたホームページに載っていた数値を思い出しながら答えることにした。
「確か…45億人ほどだったと思います。」
「10倍ほどですか…我々に勝ち目はあるのでしょうか?」
ラーテイと同じセリフが飛び出してきた。やはり人口差というものは大きいと言うことだろう。
「ラーテイ司祭にも言いましたが、地球では魔法が存在しません。代わりに科学が発達しており、道具を使った戦いに長けていますが、無手ではグランガイズの成人して生活魔法を得た若者にも勝てないほど貧弱です。それと言い忘れていましたが、地域の戦闘では人口順に対戦相手が決まるそうです」と私は説明した。
「アリライ神聖国は人族で人口では3位ですので、地域3位の国と戦うことになるのですね。ちなみにその国の情報はいただけるのですか?」
「そうですね。色々と配慮していただきましたし、一部ですが情報をお渡しします。相手の国名はインドネシアと言う名で、人口は2億8千万人ほどですね。」
「アリライ神聖国の人口が6千万を超えたところなので、4~5倍と考えられますな。ちなみにインドネシア国の民は好戦的なのですか?」
「好戦的とは聞いたことはありませんね。地球全体の人口では4位で軍事力ランキングでは14位、経済力では16位だそうです。地域では軍事力が7位、経済力が6位となっていますね。」
私は昨晩に教団との会談で対戦国の質問が来ると予想していたため、インドネシアの情報は事前に調べておいたのだ。あとは各地域のトップの国の情報と日本の情報も頭に入れてある。
「人口では4位なのに軍事力では14位なのですか。グランガイズとは異なり、人口がその国の戦力に直結するわけではないようですね」
「現在の地球では、表立っての直接的な軍事侵攻は禁忌とされています。経済の影響力が強く、軍事力と相対して経済力が重要視されており、他国を支配する際には経済力を用いる傾向があります。グランガイズでは強力な魔法を得るためには資金が必要ですが、地球では武器を入手するにも資金が必要なのです」
「我々も地球の考え方を理解しなければ、勝利することは難しいでしょうね。」
「私の国には『敵を知り己を知らば百戦危うからず』という格言があります。相手の情報を得て、自分の実力を知り戦うことによって勝利を得ることができるという意味です。私は地球の情報を調べてきましたが、グランガイズの情報はほとんど知りません。ですので、分析ができず、どちらが優勢なのか判断することができません。分析によってグランガイズ側が不利だとしても、戦い方によっては勝利を得ることもできる可能性があります。地球には私より優れた戦略家が数多く存在するでしょうが、グランガイズの情報を持っている人物はいないはずです。地球にグランガイズの情報を提供せずに戦うことによって、勝利の可能性は非常に高くなると考えられます」
異世界vs地球 砂蛇幻夢 @sunahebi
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