キリキリ🦒

maris

第1話

私の部屋の棚の隅っこには、

キリンのぬいぐるみが座っているの。

角は残った1本だけ、色も褪せてくすんでしまっている

すっかり年老いてしまったキリン


そのぬいぐるみには、持ち手が付いていて

背中には、ファスナーがついている。

小さな物を入れることが出来るバックとしても使える物。


初めてキリンに会ったのは、記憶もないくらい私が小さい頃だった。

ひと目見た時から私のお気に入りになったと教えて貰った。


そして、その時から何処へ行くにも、ぶら下げて歩き、眠る時もいつも一緒に過ごしていたの。だけど、それ以外はそのへんに転がされていたみたい。



可愛いとかそんなことは、分からなかったけど、一緒にいると何故か安心出来た。

『きりん』というのだと教えて貰って、真似したけれど、聞いてる人には、『キリキリ』だったみたいで、それから、みんなも『キリキリ』と呼ぶようになった。



でも本当は、そのキリキリは、ママがお兄ちゃんが生まれてから、お兄ちゃんの為に買った物だったんだけど、まるっきり興味をもたなかったから、4年間位は押し入れの中に入れられていたそう。

だから、私がキリキリをぶら下げて歩いてい

ると

ママが嬉しそうによく言っていたっけ。

「みーちゃんが、気に入ってくれて良かったわ、この子を初めてお店で見つけた時、ひと目惚れしちゃたのよ」って。



そして、そのお兄ちゃんは、興味がない筈なのに、私が持っているといつもキリキリを取り上げて、ぶるんぶるんと振り回し投げちゃったり、持ち手を口に咥えて、私が泣きながら追い掛けるのを嬉しそうにしていたの。

ママやパパが取り戻してくれた時には、持つ部分が濡れていて、気持ち悪くて大泣きしたのを今でもハッキリと覚えているわ。



何処へ行く時も一緒にいたから、私のアルバムの写真にはいつも、キリキリが映っていて

同じ思い出を共有している、大切ぬいぐるみ。

だから、どんなにボロボロになったって

捨てれないし、そのつもりもないの。



そして、いつか私が天国に行く時には、一緒に連れて行くよ!?



だから、それまで長生きしてネ!

私の大好きな『キリキリ』。

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キリキリ🦒 maris @marimeron

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