ぬいぐるみのぽんちゃんと一緒
さいとう みさき
何時までも一緒だよ♪
「可愛い! あれ絶対に欲しい、お父さんあれ捕って捕って!」
僕を欲しがる子が来た。
僕はお店の目玉商品。
簡単には捕らせてあげないよ?
お父さんは僕を捕まえようとする。
でも残念、持ち上がっても爪が緩んで僕はまた台の上に落ちる。
それでもお父さんは諦めないね?
娘の為に頑張るんだ。
で、その子はっと……
見ると多分三歳位の可愛らしい女の子。
くりくりとした瞳が印象的。
何度も僕を捕ろうと失敗しているその様子を固唾を飲んで見守っているね?
この子は僕を大切にしてくれるかな?
どうしよう?
そう思っていたら僕をつかみ取れるチャンスが来た!
何回かに一回はつかみ取れやすくなるんだよね、この機械。
いつもは僕を捕ろうとする人が嫌いだから僕は逃げるけどこの子なら良いかな?
仕方ないから今回だけは大人しくしてあげよう。
そして僕は捕まって女の子に手渡される。
「やったぁ! ありがとうお父さん!! 可愛ぃ~。そうだ名前! たぬきだから…… ぽんちゃん! あなたのお名前は今日からぽんちゃんね!!」
女の子はそう言って僕を抱きしめる。
まあ仕方ないかな。
僕を大切にしてくれるなら。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あれから何年経ったかな?
女の子は僕を大切にしてくれた。
抱っこして眠ったり沢山おしゃべりしてくれたり。
でも大きくなってJKとか呼ばれる位になるとお父さんともよくケンカするし、お話しもしてくれなくなった。
だけど今日は違った。
「はぁ、むかつく…… なんで私が!」
そう言って服を脱ぎ下着姿でベッドに寝転がる。
珍しく僕を抱きよせ言う。
「ぽんちゃん、私人間するの嫌になっちゃった。ぬいぐるみにでもなりたいよ」
あれ?
そうなんだ。
じゃあぬいぐるみになればずっと一緒にいられるね?
『じゃあぬいぐるみになっちゃおう』
「えっ!?」
これで僕たちは一緒にいられるね?
彼女は僕の隣でぬいぐるみになって転がっている。
これで僕らはずっと一緒だよ、ずっとね。
ぬいぐるみのぽんちゃんと一緒 さいとう みさき @saitoumisaki
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