うさぎのルカ[KAC2023:ぬいぐるみ]

神崎あきら

うさぎのルカ

うさぎのルカは ぼくの大切なぬいぐるみ

ピンク色のかわいいうさぎ 右耳には赤い目印がある


ルカはいもうとの友達だった

でも いもうとはもういない


道路に飛び出したルカを追いかけていったいもうとは

トラックのタイヤとぶつかった

そのときルカの耳に赤い印ができた


「道路に投げ出されたうさぎのぬいぐるみを追いかけて女の子が飛び出した」


ママはたくさん泣いた

パパもたくさん泣いた

いもうとはパパとママの子供だからとても悲しかったみたい


いもうとがいたとき ぼくはひとりぼっちだった

いもうとがいなくなってママはぼくといっしょにいてくれるようになった


ママといっしょにいられてぼくはうれしかった

でも パパはぼくをいじめるようになった

ぼくはパパの本当の子供じゃないからだ


ある日 ママが泣いていた

パパが車のじこで死んだって

信号が赤なのに車を止めなかったんだって


「座席の下にうさぎのぬいぐるみが落ちていました」


ルカはまたぼくのところに帰ってきた

今度は左の耳にも赤色の目印が増えた


「ブレーキペダルの間に挟まって、ブレーキが効かなかったようです」


ママはかなしくて泣いていた

ぼくとルカがいるのに 

パパといもうとの名前ばかり呼んでいる


こんどはママがぼくにいじわるをするようになった

そんなママはもういらない


ぼくはとても悲しくて

ルカをだきしめていもうとの名前を呼んだ


「全部その汚いぬいぐるみのせいよ」

 

ママはこわいかおになってぼくからルカを取り上げた

ぼくはルカを返してと泣いた


ママはベランダに出てルカを下になげようとした

ルカはぼくの大切なともだち


ぼくはママにやめてとさけんだ

でもママはやめてくれなかった


ぼくはママからルカをとりかえそうとした

ママはルカといっしょにベランダからまっさかさまにおちた


ママといっしょに地面におちたルカは

ピンクじゃなくて赤色のうさぎになった


うさぎのルカは ぼくの大切なぬいぐるみ

赤色のかわいいうさぎ

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