半生の付き合い

砂漠の使徒

大切な彼

 僕はぬいぐるみが好きだ。

 もふもふで、かわいいから。

 昔から、とくに某モンスターをゲットするゲームのキャラが好きだった。

 クリスマスプレゼントでも、よくぬいぐるみをもらっていた。

 そんな僕が、一番思い出深い友として認めているのが、とあるシロクマのぬいぐるみだ。


 彼は僕が買ったわけではない。

 プレゼントされたのでもない。

 あれは、そう……拾ったというのが正しいだろうか。

 まさに運命の出会いだった。


 出会った正確な日は覚えていない。

 たしか僕が小学生高学年のころ。

 おばあちゃんが彼を連れて来たんだ。

 もともと彼は、老人ホームにいた。

 親戚の人が一緒に寝ていたぬいぐるみの一人だった。

 でも、ある日洗濯のために僕のおばちゃんが彼を連れて来たんだ。

 それが運命の出会いだった。

 一目見て、彼のことを気に入ってしまったんだ。

 一目ぼれだね。

 だから、わがまま言って彼を譲ってもらったんだ。


 それからというもの、毎晩一緒に寝た。

 それに、遊んだ。

 今思うと、僕のお母さんにも感謝しなきゃなと思う。

 お母さんは僕が生まれる前に大きなクマのぬいぐるみと暮らしていたくらい大のぬいぐるみ好きで、僕と一緒に遊んでくれたんだ。


 これといって語れる強烈な思い出はあんまりないけど……。

 とにかく、彼とは日々を共にしたんだ。

 それで、毎日一緒に寝ていたら今日になってた。

 気づけば人生の半分は彼と一緒に寝ていたことになる。

 一人暮らしを始めてからも、いつも隣にいてくれた。

 ふふふ、ありがとうね。

 君のおかげで、どんな夜だって寂しくなかったよ。


 そんな彼だが、さすがに体にがたが来ている。

 グロテスクな表現をすると、首の後ろに穴が開いてるんだ。

 まだちぎれてないけど、いつか首がなくなるんじゃないかな。

 そのときは、なんとか縫ってあげよう。

 首以外にも、問題はある。

 もう、あんまり毛がないんだよね。

 すっかりざらざらになっちゃった。

 かわいい顔は変わらないけどね。


 というわけで。

 今回は彼との思い出を綴ってみました。

 「ぬいぐるみ」というお題を見たときに、まっさきに彼の顔が浮かんできたので。

 僕のとりとめもない思い出を読んでいただきありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

半生の付き合い 砂漠の使徒 @461kuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ