マリとマリン 2in1  燥ぐ

@tumarun

第1話 これってなんだしー

 茉琳はビリヤードテーブルの上にあるブリキのミニバケツを持っている。ただ、それがブリキでできていること、ミニュチュアサイズであることを茉琳は知らない。金属製のカップとしか見ていない。中には金色の包装紙に包まれたマロングラッセが入っている。小さく赤い縁取りのラベルには240円と印字されている。

 他のミニバケツにはソーダ味のキャンディとか、やはり金色の包装紙に包まれた一口チョコがはいっているものもある。その手前に、古き良き時代のアメ車の雑誌が扇上に置かれている。その横にベンジャミンの炭酸頭痛薬、チェリー味もある。ミックス果汁フレーバー炭酸割も、もちろんジンジャーエールも。

 窓際を見れば、ジュークBOXが英語でノリの良い軽快なソングを流している。


「ここってホンヤ?」


 壁に貼ってある往年の映画スターのポスターやビンテージカーのポスターは良いのだが、Tシャツやジーンズも値札がついて壁を飾っている。お菓子、テーブル小物、壁のポップも

あったりする。そんなものたちに埋もれるように可愛い本がディスプレイされていたりする。


「どうー見てもファンシー雑貨店だしー」

「あー、キャンデー! これのいちごミルク味すきなーだ」

「この一口クランチチョコおいしーけど噛みきれないし歯につくしでなー」 

「ボタンチョコ!」

「カラフルくねくね!」

「シュシュもある」

「携帯のアクセもある」

「禿頭のかつら!」

「メガネ、髭あじさんの仮面!」

「おばけだぁ!」

「この無気力顔人形は何?」

「何、これ パーティプリン! 食べきれないー』


 4車線道路のそば、マンションやアパートに埋もれるように、その本屋があった。アメリカのカントリーハウスを模した作り。赤い枠のドアを開けると、驚きの連続。

(ネットでお気に入りの作家の詩集があるというので来てみたら,これだあ)

(ねぇ茉琳、私は奥のコーナーに行きたいのだけれど)

「そんなのよりこっちの方がおもしれーって、見て見てこれぇ」

手近にあった小物が気になったようで、手に持ってしまう。そして、他にも気になったものがあったのだろう、バタバタと走り回ってしまう。ブリーチをして黄色く染めた長い髪を振り乱している。少しプリンになっているのが愛嬌かな。そうこうしているうちに、ぱたっと動きを止めた。よくみると顔から表情がなくなっている。ふらっと膝から崩れ落ちる形になったのだが、正面から抱き上げて倒れないように支えたものがいた。

(翔)

「言わんこっちゃない。走り回るから堕ちるんだよ」

 そんな彼も彼女を正面から抱きしめているせいか頬が赤い。

(ごめんね翔。けしからん胸を押し付けちゃて)

そのうちに彼女は目が覚めたようで。顔を上げるとニコッと笑ってぎゅっと彼を抱きしめてしまった。

「えへぇー」

(こらっ、離せって。だらしなく膨らんだ胸を押し付けるなぁ)


ギャルギャルしい茉琳とモノローグで話す茉莉、そして幼馴染の翔の2人のおでかけ風景だった。

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