Epilogue
中学3年生の時に雨宮先生から頂いた年賀状で、私の志望校が雨宮先生の母校でもあることを知った。
私はますますやる気が出て、高校に見事合格して、名実ともに雨宮先生の後輩となった。
そして、その高校で入ったオーケストラ部の顧問もまた、その高校の卒業生だと聞いた。
意を決した私は、思い切って聞いてみた。
「雨宮紗霧さんという女性を知っていますか。」
「雨宮紗霧? 知ってるよ。何処かで先生やってるってところまでは知ってる。ここでバイオリン弾いてたよ。」
ここ、とはオーケストラ部のことだ。
え、そうなの。そうだったんだ。
私、部活も後輩になってたんだ!
中学でバイオリンの話をしたら、どんな会話になったんだろう。
先生のバイオリンはどんな音色なんだろう。
貴女のバイオリンを、聞いてみたかったです。
その後は高校も卒業して、大学に行って、大人になった。
就職して実家を出た私は、不慣れな仕事からストレスをためてしまい、不眠気味になってしまっている。
昼間に眠いのでカフェインで頑張る。
悪循環なのは知っているけれど、これしか方法が思いつかなくてどうしようもない。
今夜眠れなかったら、金属ミュートをつけてバイオリンを練習するか。
最近、弾いてないし。
あの生徒手帳、実家にあるよね。今度、持ってこよう。
中学の記憶は随分薄れていって、友達も先生も全員は思い出せない。
だけれども、雨宮先生のことだけは鮮やかに思い出せる。
まるで雨宮先生だけがカラーで、それ以外がぼやけたセピアの写真であるかのように。
雨宮先生の想い出だけが、私にくっきりと焼き付いているみたい。
雨宮先生、今、貴女はどこで、何をしているのでしょうか。
未来に紡ぐ前奏歌(フォアシュピール) 星月小夜歌 @hstk_sayaka
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