第82話
*
もー!
水曜日に日直なんてサイアクだ!!
しかも先生は「あ、後あれとあれも」とか言って、ホームルームが終わった後もなかなか解放してくれなかった。
りっくん来てるのに!!
大急ぎで階段を降りて靴を履き替えてたら、里田さんがバタバタと昇降口に入って来た。
「高山くん高山くん!ちょっと!」
「え、え、え、里田さん、でも…っ」
りっくんが…っ
「三島先輩、校門のとこで告白されてる!」
「えっ?!」
こっちおいで、って里田さんに手を引かれて、迂回しながら校門に向かった。
校門の周りには、遠巻きにしてる女の子がちらほらいる。
この前より減ってるのはボブヘアの先輩が何か言ったのかな?
こそこそしながら校門に近付いていく。
あ
あのロングヘアの先輩だ…。
サラサラつやつやの髪。メイクもして、すごい綺麗にしてる…。
…りっくんのために。
「すぐじゃなくていいんです。次でいいから、私と付き合ってくださいっ」
頬を染めて必死な顔でりっくんを見上げてる。
ここから、りっくんの顔は見えない。
どんな表情でこの告白を聞いているんだろう。
「…あの、さ。悪いんだけど、次、はもうないんだよね」
どきん、と大きく心臓が跳ねた。里田さんが僕の方を向いた。
先輩は大きく目を見開いてりっくんを見てる。
「俺、今の恋人と別れるつもり1ミリもないし。向こうが別れるって言ってきたら考えなくもないけど、でもあいつ絶対そんなこと言わねぇだろうし。だから次はない。ごめんな」
どうしよう
どうしよう どうしよう
嬉しい 嬉しい 嬉しい
すっごいすっごい嬉しい…っっ
「…あの言い方だと、別れたいって言っても三島先輩別れてくれなさそうだよね」
里田さんがくすくす笑いながら言う。
「絶対、絶対、絶対別れないもん!」
大好きだから
「高山くん、キラキラしててすごい幸せそう…」
よかった、って聞こえた気がした。
「ほら、高山くん行きなよ。告白タイム終了したみたいだし」
里田さんが、僕の背中をポンと押した。
先輩がサラサラの髪を
りっくんが校舎の方に振り向いた。
あ!
「空!日直お疲れさま!」
手を上げて、眩しいほどの笑顔を向けてくれる、僕の彼氏。
「りっくんっ!」
周りにいた女子の先輩たちの視線が、バッと集まったのを感じた。
いいでしょ 僕の彼氏だよ
飛びつく勢いでりっくんの元に駆け寄ったら、長い腕で絡め取るように肩を抱かれた。
僕はりっくんの腰に腕を回してシャツの裾を握った。
りっくんはくすくす笑ってる。
「ほんとにやったな、『りっくん』」
「だ、だってりっくんは僕のだもん」
可笑しそうに僕を見下ろしてくるりっくんを上目に睨みながら言った。
「だな。で、お前は俺のもの。アヒル
そう言いながら、りっくんがぎゅうっと僕を抱き寄せた。
そして僕の耳元で甘く囁く。
「ずっと俺のそばにいるよな?空…」
了
初彼 ミヤ @miya150
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます