ロードサイドにあるチェーン店の本屋の店先で店番をしていた美しい少女が 「やぁお久しぶりですね。今日は何をお探しですか」 といった。

飛騨牛・牛・牛太郎

第1話

ロードサイドにあるチェーン店の風の本屋のレジで店番をしていた美しい少女が

「やぁお久しぶりですね。今日は何をお探しですか」

といった。



「それはリアリティがないんじゃないか」


 客役の男がそう答えた。


「仕方ないじゃないか。僕も本屋というのがどういうものなのか知らないのだ。僕のAIだかHDDだかに登録したプログラマもネットで買い物ばっかりしてるから本屋をよく知らなかったんだ。だからこんな感じじゃないかと思ってやってるにすぎないんだよ」


 少女役の女はそう答えながら、首のあたりに油を注した。


「ここは選書を重視した小型書店や地域密着型の個人店でははなく幹線道路のロードサイドにあるチェーン店、その中でも中大型書店が想定にあるんだろう。そういったチェーン店の店員が常連に対して声をかけるほど親密になるのかね?すこしくらい素っ気なくマニュアル的に働いた方がリアルじゃないか」


「そんなことを言い出したらこのような大きさの店を僕が一人で回しているというのはリアリティがないよ。書店は知らないが普通この規模なら普通数人から数十人の労働者でシフトを組んで管理するものだろう」


 少女は客役の男に対してそう答えながら、首周りのねじを緩め稼働を確認した。

 不適切な保存をしていたオイルを使った後遺症で稼働が悪くなっているので定期的にこのような処置をするようにと機械工(ドクター)に言われたのだ。


 客が来ない本屋、外から聞こえる車の音を聞きながら二人は会話を続けた。


「しかし人間の考えることはよくわからないよ。本屋というものの採算が合わなくなって無くなった後に本屋は大事だといって公営で税金をつかってこんな本屋もどきを作った癖に、客が入らなくて人を雇うと採算が合わないからって僕らのような機械人間を作ってに管理を丸投げするなんて」


 客役の男はそれを聞きながら今日のデータのバックアップを開始した。どうせ客など来ないのだ。


「その癖作ったはいいが誰も来ないんだぜ。人がいないと客が入らないと言って君のような客役の機械人間まで作ってさ。金の無駄だよ」

「しかし隣町にある小型書店やカフェを併設したような店には客が入ってニュースではやってるぜ」

「それもおかしな話だ。なぜ大半の人間が考えるもう一回行ってみたい、税金を使っても維持しておきたいと考える本屋はその当人達が行ったこともないような都市部の片隅にあるおしゃれな選書型の小さな個人書店か、行けば本から雑貨までなにまでそろう便利な大型店なんだ?本屋というものを知ってる世代の大体の人間が一番よく通い大半の人間が一番買い物をしたであろう本屋は、日本全国どこに行っても代り映えがしないこういった面白みがない実用と流行の本と雑誌がならぶロードサイドのチェーン店のような本屋だろう。なのにみんなが通った本屋を守ろうなんて話をして洒落た本屋に税金をつぎ込んでる」


 店員の少女役をインプットされているロボットは処置を終わったのでねじを締めなおし姿勢をなおした。


「その癖、文化の継承だ歴史の記憶だってこんな誰も来ないロードサイド型書店も作ってるんだぜ。矛盾だらけな話だよ。それに付き合わされてここにいなきゃいけない僕らの気持ちも考えてほしいよ」

「それはまったくだね。どうせそのうち金の無駄だって僕らと一緒に解体されるんだろうが、その部品を流用してなにかもっと有意義なこと使ってもらいたいものだ」


 客役のロボットがそう言ったところで、終業時間となったので店員の少女役のロボットは人間が誰もいない本屋に閉店の音楽を鳴らした。

 

終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロードサイドにあるチェーン店の本屋の店先で店番をしていた美しい少女が 「やぁお久しぶりですね。今日は何をお探しですか」 といった。 飛騨牛・牛・牛太郎 @fjjpgtiwi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ