Vol3


「それで座敷わらしっていうのはどうゆうことなんだ?」

「そんなこと言われましても、座敷わらしと言うしかないんですけど」


現在俺は、この座敷わらしと言い張るちびっこい少女に問いただしている最中だ。

どうやらこの少女、というか幼女みたいなもんか。

自分が座敷わらしとさっきからずっと言い張っているのだが、そんなものいるわけない。


「とりあえずお前が少し頭が残念な奴ってのはわかったんだが、何でお前この家にいるんだ? この家にはもうずっとだれも住んじゃいないって話だったが」

「だからぁ、僕がここにいるのはここの家に取り憑いている座敷わらしだからって言ってるじゃないですかぁ。あと、頭残念なんかじゃないです!」

「だからそれは何回も聞いたって。ちっ、これじゃ埒が明かねぇ」

「⋯⋯さっきから思ったんですけど、家主のお父様から何も聞いていないのですかぁ?」

「⋯⋯親父に?」


こいつ今親父に何も聞いてないかとか言ったか?

そう言えばなんか言ってたような気がしないでもないが、適当に聞き流していたためあまり思い出せない。


「あー、お前なんか親父に言われたか?」

「むーー」

「な、なんだよ」

「お前じゃなくて雪って呼んでください」

「何でそんなめんどくせぇことしなきゃいけねぇんだよ」

「僕の夢だったんです、僕の家主になる方に名前を呼んでもらうのが!」


そうやってこちらをきらきらとした瞳で見つめてきた。

いきなり名前呼べとか冗談じゃねーと思ったが、呼んでやらないと話が進まない気がしたので渋々呼ぶことにした。


「あー、んじゃ雪、なんか親父に言われたか?」

「はい家主の雪です! お父様にはうちの息子を任せたぞと言われました!」

「はぁ?」


家主の雪ですよぉとかいって顔がにやついてる奴は置いとくとして、こいつは親父の知り合いなのか?

親父は俺が物心ついた時には、いつも仕事とか言って全然家にいなかったため、いつも親戚の家に預けられていた。

なので、俺は親父自身のことをあまり知らない。

知らないのなら聞くしかないのだが、ここは紛うことなき山なので、電波なんか届くわけないので携帯電話は使えない。


「こんな所じゃあの野郎に聞くことすらできねぇじゃねぇかよ。てか、それならまたあんな麓まで下がってわざわざ連絡しに行かなきゃいけねーじゃねぇか」

「家主?どうかしたんですか?」


そういって目の前のこのちんちくりんは見つめてくる。

なんかこいつの顔見てると全部どうでも良くなるな、なんでだ?


「そんな浮かない顔して、お腹でも減ってるんですか? それなら僕がとっておきのご飯を作って差し上げますよ!」


そう言って無い胸を張って得意げに言ってくる。

こいつは、こっちの事情なんかお構い無しにずかずか俺の中に踏み込んでくる。

それが本当はめんどくさくて煩わしいはずなのに、少しだけ心の中が疼くのが無性に腹が立った。


「ちっ、なんでもねぇよ。飯作ってくれんだろ? まずいのはごめんだからな」

「⋯⋯」

「あ? どうしたちび?」

「い、いえ。後、ちびってなんですか! 雪って言ってるじゃないですか!」

「ほらいいから突っ立ってないで中入れや、さみーんだよ」

「わわ、押さないでくださいよぉ」


そんなやりとりをした時、少しだけ胸の中があったかく感じた気がした。

きっと気のせいだと自分の中に言い聞かせ、俺たちは家の中にようやく入ったのだった。


________________________

こんにちは、早く雪のかわいい姿を書きたい秋楓です。

春くんは言葉遣いはあれですが意外とちょろいので温かい目で見てやってください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ザシキワラシと目指す幸せな日常 秋楓 @hikyou0314

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ