僕はこの物語を読んでぞくっと来た。
とても不思議なレビューを書きます。恐らくとても伝わりにくい話です。
小説には巧みなストーリーや見事な構成、ましてや圧倒的筆力をもってしても届き得ない領域が存在します。そこは単純に感動するとか、泣けるとか、そういう事とは違う領域です。
敢えて言葉にするなら、それは「想いの領域」です。
これは意図しても作り出すのは難しい領域です。例えば、この物語を違う作者様が全く同じ言葉で全く同じ文を書かれても、恐らくこの感覚は味わえない気がします。これはこの筆者様だけが持ち得る「特別な言葉」なのです。
ここに書かれている言葉は生きており、直接僕の心に伝わります。
この痺れる様な感覚は、僕が理性で感じるよりも早く心に訴え、僕が知識で文脈を読むよりも早く感性を刺激する。そして特別で特殊で特異な余韻がじんじんと暫くの間残るのです。
分かりづらいですよね。
僕はこの領域に届いていらっしゃる作者様を数人存じ上げております。僕の中ではとても大切な才能であり、尊敬すべき方達と思っております。
そして、今日またそういう才に出会えました。
通常の小説として評価するなら、この筆者様はとても素直な地の文をお書きになられます。この物語は三人称で書かれていますが、このタイプの地の文を書かれる方の強みは一人称でこそ発揮される事が多いです。ただし、三人称で書かれていても、最も大事な部分では一人称と同様の効果を発揮する表現となっております。
その素直さがあるからこそ、この領域に到達し得たと確信しております。
勿論テーマもありますし、物語として伝えたい事もしっかりと存在しております。ただし、とある映画のセリフからこの物語の煽りを入れさせて頂くと、
「考えるより感じろ」
という事になります。
お勧めさせて下さい。カクヨムという大海に埋もれるには余りに惜しい物語です。僕と同じ感覚をお持ちの方には、とても大切な物語に思える事は間違いないです。
どうか宜しくお願い致します。