本屋と呼ばれる怪植物に転生したら今日も僕は大変です

闇谷 紅

本屋な僕の日常

「くそっ、弾切れか。おいッ! マガジンを持ってこいッ!」


 向こうの物陰から怒鳴り声が響いた。


 203X年、世界にこれまで確認されなかった怪物が多数出現した。どこかのファンタジーから抜け出してきたようなモノもいれば、誰も見たこともない珍妙ないでたちのモノもいて。


『なんだかなぁ』


 僕が転生したのはそのどちらでもない、『本屋』と呼ばれる植物カテゴリの怪物だった。

 一見するとどこかに生えててもおかしくなさそうな樹木だが、複数の花びらを萼で表装のように包んだ花を複数付け、どういう訳か爆発するこの花を飛ばして攻撃してくる歩行植物ことから『本屋』と名付けられたらしい。


『どうか見つかりませんように』


 声を出す器官もないのでただ、思念で僕は祈る。この本屋なる怪植物だが明確な弱点が存在した。メイン火力が爆発する花であるが故に自分も爆発に巻き込む距離まで接近されると足代わりに動かす根っこぐらいしか敵への対抗策がないのだ。


『人間くらいなら吹っ飛ばせはするけどね』


 前世が人間だとどうも人に危害を加えるには抵抗があるし、根っこは根っこだ。ホームセンターなんかで売られてる鉈や斧で簡単に断ち切られてしまう強度しかない。

 だから僕は特徴的な花の部分をパージして、立木のふりをして人とでっかいカエルみたいな怪物の戦いを傍観していた。


『けど、ここまでかなぁ』


 このまま戦いは避けたい気持ちはあった、だが花が咲きそうなのだ。二つか三つほど。


『幸いあっちの人は弾丸尽きたみたいだし』


 カエルの化け物は表面の体液で銃弾を滑らせてしまうが動きは遅い。


『そぉい』

「な」


 花開いた『本』を飛ばした直後、驚く人の声がした。そりゃそうだろう。普通の『本屋』なら傍観なんてせず人とカエルの両方を知覚し次第攻撃してるのだから。


『にっげろぉー』


 人を襲う気も戦う気もない僕はこの機に乗じて根っこを地面の外に出して走り出す。

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本屋と呼ばれる怪植物に転生したら今日も僕は大変です 闇谷 紅 @yamitanikou

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