第5話

 俺はその声のした方へと顔を向ける。

 そこにはいつものチャラ男メンバーが模擬専用の武器を持ちながらいやみったらしい笑顔で立っていた。

 その様子を見て俺はめんどくさいと思いながらもどうにか表情を取り繕いながら口を開く。


「いや~、俺みたいなどんくさいやつがチャ、たけし君たちと模擬戦なんて迷惑しかかけないから遠慮しておくよ」

「おいおい、気にすんなよ歩武君。それにそのための模擬戦でもあるんだから、たまには勇翔以外のやつとも模擬戦しないと訓練にもならないし?いいからやろうぜ~。な?」

「う~ん、そこまで言うならお願いしようかな?(クソめんどくせえ~)」

「お、じゃあさっそく......やろうぜ!」


 そう言ってまだ地面に座っている俺めがけてチャラ男は手に持った木剣を振り下ろして来た。

 そんなどう考えても常識のない行動にチャラ男の取り巻きは何か言うわけでもなくただただ笑ってみていた。

 そんな常識のないチャラ男たちに俺は冷めた目を向けた後にギリギリで転がるようにして避ける。

 チャラ男は俺が転がった場所めがけて続けざまに木剣を振り下ろしてくる。

 俺はそれも同じようにギリギリで転がるようにして避けるとチャラ男たちにはその光景が避けるために必死に転げまわっているように見えているのか汚い笑い声をあげながら見ていた。

 しかししばらくするとチャラ男たち全員が大声で笑っていたのがさすがに聞こえたのが炎華先生が駆けつけてきた。


「ねぇ、お前たちはいったいなにしてるのかな~。私は模擬戦をしろと言っただけで、一言も暴力を振るえと言っていないぞ?なあ?」

「ッ!そ、そんな怖い顔しないでくださいよ先生?こ、これは避ける練習をしているだけで」

「へぇ~?お前たちは怪我をしてもおかしくない訓練中にふざけて大きいな声で笑いながらやるっていうんだな~?そんなに訓練が好きなら~、代わりに私が相手をしてあげるよ」


 そう言って炎華先生は先ほどとは打って変わって鋭い目つきで木刀の切っ先をチャラ男たちへと向ける。


「ほらほら~かかってこ~い。大丈夫、手取り足取り教えてやるからな~」

「い、いや。大丈夫です!お、俺たちあっちで訓練してくるんで!」

「おいおい、根性がないな~。はぁ~......大丈夫か~歩武~?」

「はい。大丈夫です。ただ転がってただけなんで、汚れただけで怪我とかはしてないです」

「そうか~。すまんな~毎度毎度~。あいつらには困ったもんだな~」


 チャラ男たちが走って逃げて行った後いつものように緩い雰囲気に戻った炎華先生が謝ってくる。


「気にしないでください。いつも先生には気にかけてもらってますし、何度も助けてもらってますから」

「う~歩武~。お前はなんていいやつなんだ~。お前のような生徒を持てて私は猛烈に感動してるぞ~」


 そう言いながら顔を上にあげ目を腕で隠し見た目でも感動を表現しているが、緩い喋り方のせいで本当に感動しているかはいまいちわからない。

 そんな話をしていると、先ほど顔面に炭酸をぶちまけた勇翔がさっぱりした様子で戻ってきた。


「ふ~さっぱりした~。.........どったの先生?あと歩武はなんでそんな汚れてんの?」

「勇翔~お前はしっかり歩武を守ってやれよ~?こんないい友達はいないぞ~?」

「え?はい、それは分かってますけど?........まさかまたあいつらに絡まれたのか?」

「ああ、いつものウザがらみだよ」

「ちょっとヤッて来るわ」

「やめい」


 俺は殺気を漏らしながらチャラ男たちへと向かおうとした勇翔へチョップをかます。


「いって!?なにすんだよ、歩武!?」

「人殺しをしようとしてる友人を止めたんだが?」

「さすがに完全には殺さねえよ!」

「半殺しにはするつもりだろ?」

「.........」

「せい!」

「いって!?まだ何も言ってないだろ!?」

「沈黙が答えだろ?」

「くっ!だがよ~?さすがにそろそろ我慢の限界だろ?毎度毎度さすがにうざくね?」

「まぁ、そうだな」

「ならば止めてくれるな。友よ」

「いつの時代の人だよ、お前は?はぁ~。とりあえず気にすんな。これは俺の問題だから。お前に迷惑はかけられん。めんどいやつはほっとくのが一番。無視だ無視」


 俺の楽観的な様子に勇翔はため息をつくと殺気を引っ込める。


「心配すんな~勇翔。私がやっとくからな~」

「先生の方がもっとだめでしょ?」

「知ってるか~歩武~?世の中、ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ~だ」

「ばれなくても犯罪は犯罪です。てか、犯罪に該当するようなことするつもりなんですか?!」

「.......ものの、例えだぞ~?」

「「..........」」


 俺と勇翔は目を泳がしながらそう言った先生に対して疑いのまなざしを向けるのだった。

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