第2話
1年A組。
そこへ足を踏み入れると、きらきらした空間が広がっていた。
地元とは違い女子は垢抜けていて、綺麗な子が多く、男子はスラッとした高身長が多いイメージ。都会の子は脱毛やらプチ整形するのは当たり前のようで、身なりが整い過ぎているようにも感じた。
「こ、ここは芸能界ですか…?」
なんて1人脳内ツッコミをしつつ、自分の席を探した。
席は名前順で決められていて、1番最後の角席が私の席だった。
知り合いのいない私にとってはまだマシな席。
もし、席がクラスのど真ん中だとしたら四方八方から美の暴力を受けて心がもたなかったかもしれない。
なんてことを考えながら、窓の外を眺めていた。
窓を少し開けると、風が流れてくる。
春のこの優しい暖かさを感じる瞬間が私は好きだった。
自分の世界に入り浸っていると、後ろから
「ねえ、君もしかして知り合いいないの?」
と声を掛けられた。
痛い所を付かれ、
「そ、そうですね…」
と振り返る。
隣の席に、声の主であろう無邪気そうな笑顔を向ける男の子が座っていた。
これが、
話を聞くと、彼も知り合いがおらず、隣の人からまず仲良くなりたいという事で暇そうな私に声を掛けたらしい。
「だってさ、皆同中でグループ出来てたりして、気まずいんだよなぁ」
彼の言葉に同感だった。
小学校から中学校に上がる時、場所や立場が変わっただけでメンツは一緒だった。
田舎だったし、転入生は1人来るか来ないか程度。
変わらない環境でずっと過ごしていた。
だけど、今は違う。
顔知れた仲間はいない。
それどころか、入学前からSNSで知り合って、グループが作られていたりした。
「え、DMで話してた𓏸𓏸ちゃんだよね…?」
「そうだよ!初めまして〜」
「会いたかった〜!めちゃかわいいんだけど〜」
「あんたがそれ言う〜??笑」
とか、ネットに疎い私には考えられないようなコミュニケーション能力である。
女子はとにかく「可愛い」を連呼した。
息をするように言い、挨拶の常套句なんだなと私は感じた。
「可愛い」の中には、ヤバい、すごい、嬉しい、愛しいだったり、色んな感情が詰まっている。その汎用性の高さから、女子の間では多用されているのだ。
きっと、この単語は男子達にとって理解不能なものだろう。
「俺、見附拓斗って言うんだ。拓斗でいいよ。何か趣味あったりする?」
ぐいぐい来るもんだから、私はちょっと緊張した。
「…ゲーム好きなんだよね、銃とか使う男の子が好きそうなゲーム」
私はこの趣味を良く思っていない。
何故なら可愛くないからだ。
血飛沫溢れる銃撃戦を好み、ランキングを気にするガチ勢。
もし、私が男ならこいつ可愛くねぇと思ってしまうだろう。少し拓斗の反応を見るのが怖かった。
しかし、予想とは裏腹に
「えー!俺もそういうゲームやってる!最高じゃん!今度一緒にやろうー」
と楽しそうにしていた。
ゲーム仲間を見つけた!と言わんばかりのキラキラした目をこちらに向ける。ご主人の帰りを待ち侘びていた犬のように見え、なんだか笑ってしまいそうになった。
他にも沢山話した。好きな食べ物、動物、家族構成とか。本当に幅広く。
好きな食べ物がオムライスで一致した時は、どんなに面白かったことか。
「これからの学校生活、楽しくなりそうだね!」
私の中の不安は、拓斗とのやり取りをしていくうちに消えていった。
ワンルームと私 百方美人 @Y_korarun
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