知乍黙郎の黙らない探偵事務所

夢幻未踏

第零話 騒がしい朝

朝七時。

毎朝俺はこの時間に起きる。

知乍玉藻しりながらたまもは布団から重い足を引きすり出して、目覚めのタバコを吸うために窓を開ける。

八月中旬、すでに太陽はずいぶん高い位置にいる。

寝起きの俺の目は突然の明転に対応できずきゅっと目をつむる。

いつものように紙巻きたばこを取り出し、ライターで炙って火をつける。

寝起きのタバコは、何とも言えない恍惚感に浸ることができる。

『朝からにおいがくせぇなぁ』

「悪かったな、黒」

『わざわざ命を縮めるものを好むニンゲンは、本当に滑稽だな』

「うるせぇよ」

この会話を含め、これが俺の朝のルーティーンだ。

黒というのは、野良猫だ。

野良猫のくせに図々しく、俺の家に居着いている。

「お前、もう此処まで来たら野良猫じゃなくて飼い猫だろ」と一度言ってみたところ

『ニンゲンなんぞに飼いならされるほど、俺は落ちぶれてない』と軽くあしらわれてしまった。


知乍玉藻

21歳 男。彼女ナシ。好きなものはタバコと酒。嫌いなものはめんどくさいものとタダ働き

特技 人間でないモノと意思疎通できる


そして彼は、探偵である。


これは彼が、一つの命を救うだけの、ごくごくありふれた、チンケな物語である。

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知乍黙郎の黙らない探偵事務所 夢幻未踏 @mokurousirinagara

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