第1話 朝

あれは高校2年生の夏だったかな。

その日の朝は雨だったんだ。学校への移動は徒歩だから、傘をさしながら歩いてたんだけど、なんだか右足の裏が冷たいような…。


………濡れてる。

学校に着いて靴の裏を見てみると、派手に穴が空いていた。


「ついこないだ買ったばっかなんだけどなあ」

破れた靴を見ながら下駄箱の前でそう呟いた。

しかも結構高かったし…。


「あの…」


小さく声をかけられた。

振り向くと登校してきた女生徒が眉間にシワを寄せて悲しそうな、申し訳なさそうな、迷惑そうな…少なくともプラスな感情ではないのは確定な雰囲気を漂わせながら、外靴を右手に持ち中腰でこっちを見ていた。


「ああ!ごめんなさい!」


僕は持っていた穴空きおんぼろ靴を自分の下駄箱にブチ込み、そそくさと教室に向かった。

あの女の子は同級生だよな。

今までで喋った記憶ないけど…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スニーカー・ラバー りーしぇん @leeshen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る