第9話 正規の方法とグリッチと


 メイルダに教えてもらったことは多岐にわたった。

 まあ、それを全部長々続けるのは面倒なので、機会があるときにしよう。


 今回は単純にステータスについてだけを説明していくと。


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ロディオ・ヘイロー

生年月日 古暦6989年05月17日

登録番号 ■■6989-1060-9230-3202

ジョブ 読書家:Lv6

スキル 読書家:【速読術】【記憶整理術】

系統外スキル ―

■■ ―

■■■ ―

爵位 シェンドール王国:ヘイロー男爵 第四子

(未設定の項目) ―

(未設定の項目) ―

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 最初のロディオ・ヘイローは、普通に見たまんま名前だ。

 ちなみに、婚姻とかその他の理由で変える場合は、七面倒な申請がいるらしい。

 相続の関係で、貴族は婚姻すると男でも女でも名前が変わるので、そこはある意味ジェンダーフリーだ。



 生年月日の暦に使われている古暦というのは、そのまんま古代から続いているものだ。なので、ポストアポカリプスとしては、数千年は経っていると予想できる。

 なお、現代はあまり使っていない。理由は数字が大きすぎて使いづらいから、らしい。平成みたいな国王の就任から何年、みたいな暦を採用している。

 僕的にはまだ四桁なんだからガマンしろよ。という意味もこめてこの古暦を使っていくつもりだ。天文学の研究が途絶えてるから、現代の暦は絶対ズレるだろうし。



 次。登録番号はその通りに個別の番号だ。

 この時代には関係ないかもしれないけど、セキュリティ的には秘密にしておいた方がいいだろう。

 最初の2文字は古代文字が使われている。これは多分人数稼ぎだ。前世のお札に書かれていた記数字にアルファベットも入っているのとおなじようなものだろう。



 ジョブというのは、神の祝福を受けるための根源みたいなものとされているらしい。

 レベルが上がると得られる祝福、つまりスキルも増えていく。レベルで配布されるスキルもあれば、自然と生えるスキルもあるそうだ。

 なら、レベルを上げる方法は、というと。ジョブに関わるような作業をする、魔物を倒す、などらしい。

 やっぱり戦闘職優位じゃないか……。

 その救済というわけじゃないだろうが、実はジョブは複数つけることが可能だ。

 もちろんそのためには新しい祝福を得る必要があるものの。幅広い作業でレベルを上げるための──まあ言ってしまえば経験値を得られるんだろう。



 スキルはジョブに付随しているものとされているが。

 実は、スキル自体は一部を除き、一度身につければジョブにはよらず使うことができる。


 ただし、その精度にはスキルごとに存在するステータス表示されていない数値、熟練度というものが関係してくる。

 熟練度、という言葉で察しているかもしれないけど。スキルを使い熟して熟練度を上げていくことでスキルが定着していき、最終的にはジョブをつけなくとも完全に発動が可能となる。

 まあ要するに、ジョブで獲得できるスキルは仮免許みたいなものなのである。



 スキルの熟練度上昇に、ジョブのレベル上昇と。成長する要素がいくつもあるのなら、ジョブを外す意味なんてあるのかと思うかもしれない。

 しかし、ジョブをたくさん付ければ付けるほどいい、なんていう美味い話があるわけもなく。数多くのジョブをつけると、それだけ成長が遅くなっていくらしい。

 ゲーム的に言えば、経験値が分散してしまうのだろう。


 とはいえ複数ジョブによる多数のスキルを運用するメリットは大きく。

 この世界では、少数のジョブに絞って育てる派閥と、広く浅く育てる派閥に二分されている。



 一方、系統外スキルはジョブとは関係なく習得可能かつ発動可能なスキルだ。

 さっき、ジョブから派生するようなスキル──いわば通常スキル──は一部を除いて使えるようになる、と説明したが。逆にいえば一部は使えるようにならないということ。

 対して、この系統外のスキルなら、本来ジョブがありきでないと使えない、同じ名前のスキルでも常に発動することができる。


 でもそれは一部のスキルの話でしょう?と言いたくなるかも知れない。

 しかしながら、ジョブに付随するような、外すと使えなくなるスキルには、パッシブ効果のものが多いため、この影響は実はかなり大きい。



 スキルについてイメージ的に纏めると。

 【魔法攻撃力上昇】みたいなパッシブスキルがあるとして、これが系統外にあるならどんなジョブでも発動するところ。ジョブから派生した【魔法攻撃力上昇】はジョブを外してしまうと発動しなくなってしまう、といった感じだ。

 逆に【火属性魔法】みたいなスキルに関しては、系統外スキルでも、熟練度を上げていれば通常スキルでも、どちらにあってもジョブによらず発動が可能になる。なお、熟練度をいくら上げても、通常スキルが系統外に移動する、といったことはない。

 


 残り二つの古代語で書かれた部分は研究中だそうだ。

 古代に使われていた何らかの称号だったのではないか、とされているらしい。



 最後の爵位は、そのまま僕が持っている爵位だ。

 爵位そのものは国から提供されていて、変更などにはヘイロー領の教会よりももっとグレードの高い端末による干渉が必要となる。この場合、シェンドール王国というのは、爵位を提供及び保証している国であり、今僕が所属している国の名前だ。

 高いグレードの端末が必要なのになぜ僕には最初からあるのかと言えば、貴族は子供が生まれてすぐに仮の継承の儀式を行うからだそうだ。第四子のような付帯した表記がつく代わりに、わざわざグレードの高い端末で干渉しなくてもつけることが可能らしい。



 まだ一応あった。

 未登録の項目、は未登録の項目だ。


 ……真面目に解説すると、ギルドなどに所属した際に、所属団体をここに加えることができる。

 ちなみに、この項目で爵位という名前を勝手につけたりはできるのかというと、実はできるたりする。ただし、シェンドール王国の名前を使うことはできない。

 というのも、シェンドール王国の名前は管理アカウントみたいな感じで何処かに登録されているらしく、偽装することができないからだ。ついでにバレると処刑まったなしだ。まあ国家転覆をねらっているととられても仕方ないしね。

 あとは、二つしかスロットがないように見えるけど、実はそれ以上の数も普通に登録できることくらいだ。



 ステータス画面の話はこれくらいにしよう。


 ◇


 ところで、実は伺神祭からレベルが一つ上がっていることには気づいただろうか。


 これにはとあるカラクリがある。

 僕のレベルが、最初から5だったことも含め、こうも簡単に上がっているのには理由があったのだ。


 本来の読書家のレベリング方法は、至極単純に本を読むというもの。本を読めば読むほど、ディッティチェリ神が司る書物への親和性が上がり、レベルが上がるそうだ。


 しかし僕は抜け道とでも言えそうなものを見つけた。

 ちなみに【速読術】をつかうとかではない。

 てかそんなお膳立てされてるものを、抜け道とか言ってドヤってたらさすがにやばすぎでしょうよ。


 なんてことを言っている手前だが、実はそんなドヤれるものでもない。


 さて、その方法とは、辞書を作ることだった。


 気づいたのは偶然で、レベルが上がったときに、たまたま単語帳をまとめていたからだ。もし、普通に本を読んでいるときだったら、「レベルの上がり方ってこんなもんか」と気が付くことはなかっただろう。


 しかし、よく考えなくともおかしなことだ。

 だって書家なのに、それって書く方じゃないかと。

 この辺りは微妙な話で、辞書は読むときに必要なものだから読書家判定に入ったとか、そんなところを考えている。

 ちなみにだが、メイルダに聞いたところでは、読書家のレベルは物書きをしても急速に上がったりすることはないらしい。


 まあ、バグ……、なんですかねぇ。

 バグでレベル上げた場合にどうなるのかはよくわからないけど。さすがにリアルでBANされたりするとは思えないので、あげれる分には喜んでおこう。


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