第11話 へんてこな本屋さん

 ざばーん、ざっばーん。

 波がいったりきたり。

 白い砂浜、青い空。

 森が生い茂る小さな山。

 とっても綺麗な無人島。

 そこに、男の人が立っていました。


「あぁ困った」


 男の人は頭を抱えています。

 船が壊れて、この島に流されてきたのです。


 その時、森から音が聞こえました。

 がさごそがさごそがさがさがさ。


 何が出てくるのでしょう。

 くまさんだったらどうしましょう。

 男の人は海に逃げました。


「ちょっとまって」


 声をかけられたので振り向くと、そこにはへんてこな本屋さんがいました。


 男の人より少し背が高い本屋さんで、にょきにょきと生えた手を振りながら、にょきにょき生えた足で歩いてきます。


「こんにちは。私はへんてこな本屋さんだよ」


 男の人はびっくりしながら「こんにちは」と返事をしました。


「こんなところでどうしたの?」


「船が壊れてしまって、この島に流されてきたんだ」


 へんてこな本屋さんは「あら、それは大変ね」と言い、お腹のところにある本屋さんの入り口にズボッと手を入れました。


 男の人はまたまたびっくり。


「はい、これ貸してあげる」


 出てきたのはサバイバル術が書かれた本でした。


「あと、これも必要だよね」


 次は船の直し方の本。

 男の人は「ありがとう」とお礼を言いました。


「どういたしまして」


 へんてこな本屋さんは力持ちポーズをして答えました。


「へんてこな本屋さん、何か食べ物は持ってない? お腹がペコペコなんだ」


 へんてこな本屋さんはまたお腹にズボッと手を入れます。


「はい、これどうぞ」


 へんてこな本屋さんが取り出したのは食べられる植物図鑑でした。


「あと、これも必要だよね」


 次は食べられる海の生き物図鑑。

 これがあれば無人島にある食べ物が全部わかりそう。


「これで大丈夫かな?」


「ありがとう。へんてこな本屋さんはすごいね」


「ううん、すごいのは本だよ」


 へんてこな本屋さんは、ふるふると体を振って言うのでした。


 おしまい。

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へんてこな物語 出井啓 @riverbookG

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