第7話「私ではダメ……ですか?」

「え、えっちってあの?」

「うん、そしたら私の夢は叶うの。」

「もう私は、空っぽだから。」

その言葉に私は反論した。

「偽物だったのはショックだけど、自分で決めつけてはいけない。」

「少なくとも、私は梅のことは嫌いじゃないよ。」

すると梅は私の顔を見て言った。

「どうして?私はあなたに酷いこと……騙していたんだよ?」

「確かにそうだけど、私はその事実を受け止める。」

「だって、名前を変えても性格とかは変わらないでしょ?」

「それは……そうだけど……」

「……私には分かるよ。梅は本当に良い子ってこと。」

「ふふ、あなたが偽物ってことはみんなに秘密よ。」

何故か、風香は笑っていた。私がしていたことは一体何だったのだろう。

「あっ、えっと……えっち……は後でいい?」

「さすがに今はちょっと……」

「わ、分かった……」

お互いえっちのことを想像して赤くなってしまった。

「よし!桜ちゃんを探しに行こ。」

「うん、そうだね。」

そして、梅と一緒に桜がいる場所に向かうだった。


「……ここだよ。」

目の前には分厚い鉄の扉が立ちはだかっていた。

「これ、どうやって開けるの?」

「そのスマホから開けれるよ。」

「え?」

「実はそのスマホ、私のなんだよ。」

「え?どういう事?」

「まぁまぁ、後で教えるから今は桜ちゃんを」

「そうだね!」

私はスマホに表示されているマップを操作する。

「えっと、これかな?」

すると扉のロックが解除された音がした。

そしてその中にベットで寝ている早桜がいた。

「桜ちゃん!」

「……良かった。」

風香は早桜を抱きしめた。

「ちょ、ちょっと苦しいんだけど……」

「あ、ごめん……」

「えっと、これどういう状況?」

「あなたを助けに来たの。」

「私を?」

「……ああ、そういうこと。」

「ごめんね、結構自由だったから分からなかったよ。」

「詳しいことは事が終わった後に話すよ。」

そう言うと早桜は立ち上がった。

「よし、脱出しよ。」

「そうだね、いつ銃持ちの女の子が来るか分からない。」

そうして私たちはもと来た道を戻るのだった。



私と楓花はすでに学校から脱出していた。

「他の人たちは逃げれたのかな?」

「分からない。」

「もしかしたら、すでに捕まったのかも。」

「でも、学校から出たら追いかけて来なくなったのは何でなんだろう?」

「うーん、管轄外とか?」

「さぁ、分からん。」

「……それにしても、見た目は本当に学校だよな。」

「うん、まさかあんな奴らがいるとは思わなかった。」

「……うん?」

私は何かの気配を感じ取った。

「楓花、隠れるぞ!」

「え!?」

僕は楓花の腕を掴んで気配がした逆の方へ足音を消して移動した。

「……ふぅ。」

「木のおかげで隠れやすいな。」

「だ、大丈夫なの?」

楓花は少し怯えていた。

私は楓花をぎゅっと抱きしめた。

「大丈夫、絶対守るから。」

「……うん」

あの足音はいつの間にか消えていた。

「よし、周辺に人の気配はない。」

「さてどうしようか、このままここにいたら死ぬかもしれない。」

すると、スマホに通知が来た。

「ん?なんだ?メッセージ?」

私は送られて来たメッセージを読む。

このメッセージを読んで私は、怒りと悲しみが同時に襲ってきた。

「くそ、私はどうすればよかったんだ……」

「覚える、この出来事を覚えるそして忘れない。」

「生き残った私たちにできること。」

「ああ、そうだな。」

すると出口から誰から出てきた。

私たちは恐る恐る覗いた、すると……

風香と早桜だった。だけど知らない女の子がいる。

私は3人を遠くから呼ぶ。

「おーい……おーい……」

声が聞こえたのか、風香がこっちを向いた。

「二人とも、生きていたんだね。」

「他の人は?」

「……メッセージに」

「だけど木知 楜と大得 ゑ鳴が分からない。」

私は走るのに必死で、スマホの通知に気付いていなかった。

そこに書いてあった内容は、最悪だった。


『このメッセージを見ている人へ』

えっと、なんて言えばいいのか分からないけど……

もう、ダメみたいなの。今来たら確実に殺される。

なので助けに来ないで!

最後のお願い、私たちを覚えていてくれると嬉しいな。

あの二人のことも……

一日間だけだったけど、一緒のクラスになれて嬉しかったよ。

会田 姫華えだ ひみか

添田 垣見そえだ かきみ

桃作 紗枝ももさくさえ

桃作 有紗ももさくゆさ

時里 日美ときさと ひみ

頴川 沙依えかわ さより)

……

でもやっぱり死にたくない……よぉ……


「こんなことになっていたなんて……」

「助けられず、ごめんなさい……」

「風香のせいじゃないよ。」

「全てこの"研究所"のせいなんだから。」

「……研究所?学校じゃないのか。」

「てか、この女の子は誰なんだ?」

「わ、私は……」

「それより、早くここから脱出しないと。」

と、その時ブザー音が鳴りだした。

「な、なんだ?」

「こ、これは……」

《削除シーケンスが起動されました。》

《内部にいる研究員、職員は地下Sブロックに移動してください。》

《なお、これは取り消すことができません。》

《繰り返しお知らせします……》

すると梅が焦った口調だけど冷静な声で言った。

「みんな、取り敢えずここから離れるよ。」

「削除シーケンスは研究所の最終兵器だよ。」

「……分かった。」

「二人はどうするの?」

「無事に脱出することを祈るしかない。」

「仕方ない、ここから逃げるぞ!」

そして私たちは研究所から全力疾走で逃げるのだった。



走っていると突然ブザー音がなり始めた。

「一体何が起きたの?」

「分からない、取り敢えず脱出することを考えよう。」

「うん、分かった。」

そして私とゑ鳴は廊下を走る。

「ねぇあそこ、ドアが開いてる。」

ゑ鳴が指さした方に一つだけ開いているドアがあった。

「本当だ。ちょっと気を付けてた方がいいかもね。」

そしてそのドアを通り過ぎようとしたその時――

私たちは言葉を失った。

「なっ……こ、これって……」

「くそ、なんでこんなことに」

そこには、変わり果てたクラスメイトがいた。

「ついさっきまでは生きていたのか。」

「一体誰がこんなことを」

体は綺麗に並べられていて、損傷は少ない。

「記録として撮っておいた方がいいんじゃない?」

「うん、犯人を捕まえるには証拠がいるよな。」

「ただ、これが組織的に行われていたら。」

「取り敢えず、全体と個人で撮っておこう。」

「遺影にも……」

「……うん。」

そして私たちは6人の遺体の写真を撮影した。

「他の人は何処に?」

「ここにいないってことは、既に脱出したんじゃないかな。」

「取り敢えず、早く脱出しよ。」

すると、ブザー音が強くなった。

《削除シーケンス開始まで残り1分……残り1分》

「は、早く脱出しないと!」

「分かった。」

私たちは一度手を合わせてその場を後にした。

その後のことはあまり覚えていない。

命からがら逃げたことは覚えている。


「ここ……何処?」

「……分からない。」

少しづつ周りの状況は分かってきた。

命からがら逃げて、気付いたら公園にいた。

2人は公園ベンチに座っていて、手を握っている。

そして周りには誰もいなくて、空には星々が煌々こうこうに光っていた。

「はぁ、脱出したんだ。」

「うん、そうだね。」

「……結婚の約束」

「ふふ、そうだね。」

「ねぇ私、楜の唇……欲しくなっちゃった。」

「周りにいない誰もいないから、シて欲しい……」

その言葉に私はゑ鳴に近づいた。

そして私は無言で唇にキスした。

「可愛いよ……」

これからどうなるか分からない。

だけど今は全て忘れて、ゑ鳴だけを感じたい。

私はぎゅっと抱きしめ、いっぱいキスするのだった。

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一つだけの空白席 みるもるの家 @mirumoru

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