第6話「目の前の女の子」

私と早桜は教室を全速力で逃げる。

「ゑ鳴と楜は大丈夫かな。」

「あの二人だら大丈夫だと思うよ。」

「気になるのなら、スマホでみんなの位置を確認してみたら?」

「へぇ、そんな機能があるんだ。」

私はスマホを取り出し、みんなの位置を調べた。

「うん!大丈夫そう。……うん?」

すると突然、早桜が走るのをやめた。私もつられて走るのを止める。

「ど、どうしたの?」

「私、走るの疲れたから、ここの部屋に入らない?」

早桜は目の前のドアを指さした。

「でも、ここ私の部屋じゃないけど。」

「大丈夫。風香は凄い人だから。」

「まず、マップを開いて、目の前のドアをダブルタップしてみて。」

言った通りにすると、目の前のドアが開いた。

早桜はお構いなしに部屋に入って行く。私もそれを追いかける。

「えっ、ど、どうして開いたの?」

「言ったじゃん、風香は凄い人なんだよ。」

「実際、学級委員より凄いよ。」

すると、早桜は立ち止まった。

「私ね、風香と結婚したい!」

その言葉に、私はビックリしてしまった。

「この気持ちは、偽りなく"本当の気持ち"……」

「私を嫌いにならないで……この先ずっと。」

そう言った途端、早桜は瞬時に距離を詰めて、唇にキスしてきた。

そのキスには情熱的で"好き"の気持ちが溢れていた。

気持ちが強くて、全身の力が抜けていく。

「(こ、このままでは動けなくなる。)」

「(なんとしてでも、確かめないと。)」

私は、最後の力を振り絞って、早桜の情熱的なキスを止めた。

「ま、待って、今はこんなこと、している訳にはいかないでしょ。」

「うんん、そんなことないよ。ここにいれば、当分は安全だよ。」

その言葉に、私は確信した。

目の前の女の子は「身仲 早桜」ではないことを――


私は恐る恐る目の前の女の子を問い詰める。

「ね、ねぇ。どうしてそんなことが分かるの?」

「わ、分かるって……あっ……」

「私ね、さっきマップを見たの、覚えてる?」

「そこにね、"身仲 早桜"という名前が二つ表示されいたの。」

私はスマホを取り出し、目の前の女の子に見せる。

女の子の顔を少し焦っている顔をしている。

「あはは、何かの間違いじゃないの?」

「へぇ、今さら言い訳しても、意味ないと思うよ。」

「本当の事を言って、"本物"の身仲 早桜の安全を保証するのなら許してあげる。」

そう言うと、女の子は下を話し始めた。

「分かった。正直に話すよ。「その代わりに、一つだけお願いがあるんだ。」

「うん、分かった。でも、本物の身仲 早桜は大丈夫なんだよね?」

女の子は下を向いたまま、頷いた。

「それで、お願いってなに?」

「……私がこれを言うのは筋違いかもしれない、だけど私はこの気持ちを伝えたい――」

「私は、偽物の身仲 早桜ではなく、本物の私……羽場 梅はば うめとして、枝心 風香えし かおりが好きです!!」

「わ、私とちょっとでいいので、え、えっちしてください!!」

「…………へ?」

その言葉に、私の思考は止まってしまったのだった。

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