本屋での運命的な出会い

木曜日御前

第1話

 とある本屋の奥地。

 セーラー服を着た女学生が必死に手を伸ばし、本棚の一番上にある本を取ろうとしていた。

 本来ならばハシゴを使うところだが、少し前に故障したらしく、それには使用不可の文字が貼られている。

 そんな彼女に気づいた詰襟の青年が、そろりと背後に近づき、お目当てだろう本をすっと取り出す。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 少女は申し訳なさそうにしながら、少年の手にある本を受け取る。そして、目の前の少年をおずおずと見上げた。

 

「好きなの?」

 

 少しの勇気を出した少年は少女に声を掛けた。彼女の手には一冊の大きくて、少し厚みのある漫画。表紙には今話題のアニメの主人公とライバルが描かれている。

 

「あ、はい」

 上擦った声の彼女に、男はどうやら同志を見つけたと言わんばかりに楽しく話しはじめる。

「『ハイカットHERO』だよね。僕も好きなんだよ。なんか、絵柄は違うけど、そんな番外編も出てたんだ」

「そ、そうですね、私も初めて知って、あはは」

 

 少年は目を輝かせ、今話題の『ハイカットHERO』という週刊少年誌で今一番話題の漫画に対して、思い思いを語りはじめる。少女は少年の姿を見ながら、頬をさらに赤くし自分の手にある本を見た。少年は恥ずかしそうにしている少女を見て、自分もまた頬が赤く染まるのを感じる。

 そして、なんとも言えない居心地に、思わず踵を返した。

 

「あ、申し訳ない、用事があるんだ。もし今度、ここで会えたら、また語ろう」

 

 言葉を言い切る前に少女の前から去っていく少年。

 少女は後ろ姿を見送り、ほっと安堵の息を吐いた。

 

「番外編か……」

 

 少女はもう一度自分の腕の中にある本を見た。表紙には『主人公×ライバルアンソロジー 俺だけのHERO』と書かれている。


「本当は、その下の別漫画のがほしかったけど、買ってみようかな」


 これが後にライ主最強の壁サーの女王と呼ばれる少女の運命的な始まりであった。

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本屋での運命的な出会い 木曜日御前 @narehatedeath888

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