【人と建物の数だけ物語がある】
その場所は、よく見ると様々な年代の木造や
鉄筋や金属製の建物が組み合わさっていて
時代を表す建物が一か所に纏まっているような空間が広がっていた。
時代の荒波を生き抜いていた証拠なのか、
錆びついていたり目立つ所だと一部の壁が崩れおちていて
件の屋台は広場らしき場所の一角に
軒を連ね大中小の煙と共にいい匂いを区域中に漂わせていた。
「イラっしゃいっっ!!!!!
ミンナにタべられるようにスルから並んでマててねぇぇぇぇ!!!!」
四店舗ぐらいの屋台の真ん中で
でかめの鍋をかき混ぜながらこの屋台の主らしき単眼に
茶色く蓄えたあごひげと丸太のような腕を持った
大柄な体つきをした
男の人がカタコト混じりで
並んでいる人だかりに向かって叫んでいた。
「お~やってるねぇ!!」
「やっぱ今日もかぁ~」
真紀さん達は、その列を見て慣れているのか
そのまま列に並び始め
私もあっけに取られながらもその場に習って並んでいく。
顔が無い人や、犬の被り物?をした人…年齢や性別がぱっと見
分からない人々がこの先の一杯の食事を求めて
少しの諍いも起こさず
並んでいる姿は、言い方が少し悪いかもしれないが
百鬼夜行のように感じた。
「いつもこんな感じなんですか…?」
前列にいるルミネさんにひっそりと聞いて見ると
「いつもこれぐらいだけど今日は休日だから特に多いね~」
「そうなんですねっ‥と言うか今から何食べるんですか?」
「パジべェって言うんーなんて言うんだろう
ピリ辛な雑炊?みたいな感じ?まぁ食べてみたらわかるよ」
「はぁ…わかりました」
そんな話をしている内に列は、進んでいき私達の番になる。
単眼の男性は、目の前にするとさらに大きく巨人のような存在感を放っていた。
が、その瞳は怖いものではなく優しさが籠っていた。
真紀さんが片手をあげて笑みを浮かべながら声をかける。
「アイ!イラしゃいッ!!ご注文ナニスル?」
「よ!リン繁盛してる?」
「オー!マキー!ご覧の通りだヨ!いつもありがと!
ってうん? そのコイッテタこ?」
「あっどうもっ蛍火所縁っていっ言います!!
よろしくお願いしますっ」
私は、緊張からか
少し甘噛みしながらも自己紹介をしリンさんに頭を下げた。
「ヨロしくね!!リン言いマす!
アっ最近キたんだったらおかねないでシょ?今日サービスシとくよ!」
「えっ?いいんですか?ありがとうございますっ!」
そう言いながらリンさんは、オリーブオイルっぽい匂いを漂わせる
焼いた白飯が乗った白飯に
赤い漂っていた香辛料が多く含まれているスープをかけた料理を
三人分あっという間に作り私達の前に置く。
「アい!じゃ二人分で、四百円ネ~!」
「オッケーありがとう!ウチが払っておくから
二人とも食べる場所決めといてくれるかい?」
「はーい!了解まきねぇ!
おいしそ~! あっはいこれゆえんちゃんの分ね」
「あっありがとうございます!(結構辛そうだなぁ…)」
かなりボリュームがあるのか重みを感じる皿を持ちながら
列を離れてルミネさんと食べれる場所があるか
探し出す。辺りを見てみると基本的に椅子や机があるわけでなく
街道沿いの縁石とかに座り込んで食べていたり
話を聞くと注文と一緒に持ち帰ると言えば持ち帰り用の容器に
変えてくれるらしく持ち帰っている人もちらほら見かけた。
「お~いルミネちゃん ここ来るかい?」
「あー!!猫匙のおっちゃんたちいいの?」
「良いよーあれ?横の子は新入りさんかい?」
場所を探す私達に、声をかけてきたのはさっき列に並んでいた
犬の着ぐるみの頭を被った(かなりリアル)に作業服を着た
声から想像するにおじさんが似たような被り物に作業服を着た人たちと
車座になって食べていた。
「あっ初めまして昨日から、ここに来ましたっ蛍火所縁って言います!」
「よろしく!俺は猫匙 そこの工場で勤めてんだわ
んで、こいつらが…」
「あっ鳥井です!よろしくです!」
猫の被り物をした猫鯖さんよりも声が若い印象の男性が
食べる手を止め軽くぺこりと一礼する。
「そして私が犬匙と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
最後にニワトリの被り物をした初老の声をした男性が深々と頭を下げた。
「あっえとね…犬の被りものをしてるのが猫匙のおっちゃんで
猫の被り物をしているのが鳥井くん
ニワトリの被りものをしてるのが犬匙さんだよ」
ややこしい。ややこしすぎて戸惑っている所を
ルミネさんがもう一度本人たちを指しながら紹介してくれる。
正直もの凄く救われた。そのままその人達と食べる事になったのだが、
肝心のパジべェは、少し冷めていても美味しかった。
「そういやゆえんちゃん?だっけはどこ勤めんだい?」
「あーこの子は凸凹姉妹のとこどうかなって」
「あそんこの姉妹んの所大丈夫かぁ?」
「えっ?」
食べるのに夢中になっていたらしく、急いで顔をあげる。
「ああ、ゆえんちゃんさお金ないでしょ?」
「あっはい…」
「まきねぇからさっき連絡あったんだけどさ、
もうバーのオッケー出たらしいから、ゆえんちゃん明日から
働いてね?」
「はい?」
話の流れがいまいち掴めないまま、なぜかここでの就職先が決まりました。
てか、仕事しなくても大丈夫と思っていたけれど、その気持ちは
甘かったみたいです…。
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