あの子が見つめてくるのは何故?

ののあ@各書店で書籍発売中

もしかして

 ――なにかやらかそうとしてたり?


 書店の奥にあうカウンターで退屈している私は、そんなことを考えていた。

 そう考える理由はひとつ。少し前から店内でウロウロしている少年が目について仕方ないから。

 

 この店は書店といっても小さなもので、おばあちゃんが半ば道楽でやっているような古本屋だ。

 

 そんなところに中高生くらいの若者が何をしに……? しかも滞在時間が長い。流行りの漫画や小説もほぼ無い店なのに。


(となると、コレは……)


 万引きかなぁ。

 うんざりしてしまいそうだ。


 一応監視カメラは設置してある。きっと今は退屈そうな二十代前半の三つ編みエプロン孫娘が映っているだろう。


 万引き死すべし慈悲はなし。

 残念ですけどね、本をもってかれる辛さは十二分に理解しているので私は決してその瞬間を見逃しはしませんよ? ずーーーーっとこっちを見てても無駄だからね、その分見返してやるんだから。


 これでもし万引きなんてされようものなら……女子としては中々速いと評判の健脚をもって追いかけ、八つ当たり気味に1~2発はどついてしまうかもしれない。いや、間違いなくするだろう。


 また、あの少年がこっちをちらちら見てきた。

 私がずっと見ているものだからどうしたって視線はぶつかるわけで、その度に少年は慌てて顔を背けてしまう。


 やるならやりなさいよハッキリしないわね!

 

 といった感じに大声を出せたら、なんて考え始めた矢先。


「あ、あの……」

「え?」


 予想外にも、向こうからカウンターに近づいて声をかけてきた。

 まさか万引きから強盗に切り替えたとでもいうの? ちょっと待って、さすがにそれは対処が難しいからっ。


「付き合ってる人がいたりしますか!?」

「……はい?」


 ◇◇◇


 なんでそんな事を聞いてくるのか、当時の私にはさっぱり理解できなかった。

 ただあまりにもインパクトがあったというか印象に残りすぎたのか。


 その少年が、今では私の彼氏です。

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