本屋に行くと、なぜか便意をもよおす

坂本 光陽

本屋に行くと、なぜか便意をもよおす


 あなたは「青木まりこ現象」を御存知だろうか?


 本屋に行くと、なぜかトイレに行きたくなる、なぜか便意をもよおす、という現象である。ただの噂話か都市伝説のように思われるかもしれないが、青木まりこ現象は確かに存在しており、体験者と発症例は決して少なくない。


 もっとも、現時点では発症原因は不明らしい。


 ただ、僕には確信がある。


 便意をもよおす原因は、おそらく、ある種のコンプレックスと緊張感である。国民の読書離れが叫ばれて久しいが、本屋には膨大な数の本が並んでいる。さまざまなジャンルがあり、堅い内容から柔軟な内容まで多種多様な本があるが、それは言い換えれば、情報と知識の蓄積である。


 本を読まない人が膨大な本に囲まれた時、後ろめたさや圧迫感、劣等感に襲われることは、ごく自然な反応だろう。御存知だろうか? デリケートな人は感情をゆさぶられると、過剰に胃腸が反応する。強い緊張感は下痢を起こす場合もある。


 膨大な量の本による感情のゆさぶりが便意とつながっていることは、もはや間違いないだろう。


 実は、この文章だって例外ではない。あなたは読み進めているうちに、便意をもよおしたりしていないだろうか? もしそうなら、僕に遠慮する必要はない。今すぐトイレに急行することをお勧めする。


 さて、ここから重要な話になる。僕は、こう考えたのだ。

 青木まりこ現象をビジネスとしてとらえられないだろうか?


 例えば、肉体的にまったく負担のない下剤という可能性はどうだろう。もちろん、考えているのは薬剤ではなく、バーチャルな映像と音楽をかけあわせたツールである。副作用がまったくないという謳い文句は、便秘に悩んでいる方の心に響くのではないだろうか?


 もし、あなたが僕のアイデアに強い関心を持ち、スポンサー契約をしてもかまわないと思われるのなら、どうぞ御一報ください。当方は門を広く開けて、お待ちしております。






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