第2話 飴玉を二つ
あ、お兄ちゃんだ。
「お兄」
誰だろう。誰かと話してる。えっと、なにかしている時は話しかけちゃいけないって言ってたから、話しかけちゃだめだよね。でも、早く飴玉舐めたいな。早く終わらないかな。我慢しないとな。あ、こっちに来る。終わったのかな。
「あれ、もう終わったのかい」
「うん。飴玉ちょうだい」
「よーし、よく頑張ったな。ほれ、飴玉。それにしても今日は早かったな」
やった。飴玉。
「えっとね、ちゃんと首を狙ったんだよ」
「そうか、この前言ったこと、よく覚えてたな」
「うん。だってその方が痛くないんでしょ」
「あ、そうだ今日は早かったから、もう一個お願い、聞いてくれないかな」
「飴玉くれるの」
「うん、もちろん、そうだな、今日は特別もう一個あげちゃおうかな」
飴玉、もう一個もらえる。
今度のはちょっと時間かかりそうだな。あの優しそうなお姉ちゃん、すごいお家に住んでるな。どうやって入ろうかな。えっと。こういう時は、周りをよく見て、いっぱい考えるって言ってたから。えっと、すごく大きい家と、すごく大きい扉と、すごく大きい車、あとは、枝と葉っぱがいっぱい。でっかい木がいっぱい。そうだ。木に登って入れないかな。うーん。大きいな。よいしょ。よいしょ。よいしょ。
「ちょっと、あなた何やってるの、危ないでしょ」
「わっっ」
落ちる。
「いた…くない」
「あなた、大丈夫」
「大じょ」
さっきのお姉ちゃん。どうして、ここにいるんだろう。
「お嬢様。急に走り出して、どうしたんのですか」
「すみません。この子が木を登っていたもので。あの、念の為怪我がないか見てもらってもいいですか」
「お嬢様。慣れないのはわかりますが、もう少し、自分の立場を自覚してください。さ、そんな子放っておいて、昼食のお時間ですので」
「この子も連れて行きます。昼食は遅れるとお伝えください」
お姉ちゃん、かっこいいな。でも、よかった。これですぐまた飴玉貰える。
「大丈夫かな。あなたね、その辺の公園の木とかならまだしも、あの木は危ないでしょ」
このお姉ちゃん。
「あのね、お願いがあるんだけど」
「はあ、本当に反省しているのかな。えーと、それで、お願いって何かな」
「あのね、飴玉を貰うために 」
飴玉少女 やみふね ツミ @yamihune
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