第31話 日常的に繰り返す

「これ、殺す?」

 いきなり、物騒な事を言っているのはサフィーです。

 2人で買い物中、突然子供が出現しました。戦闘系のスキルで縮地です。結構有名なスキルです。

 子供は、僕達の持っていた食料を奪うと、すぐに消えました。現在買い物をしているのは、街の中でも貴族専用のエリアです。一般人の立ち入りは禁止されています。

 縮地は、瞬間移動ではなく高速移動。普通の人なら、見失うかもしれませんが、普通に目で追えました。

 だから、捕まえて拘束しています。

「これ、貴族関係者ではないよね?」

 サフィーは、子供を人扱いしていません。貴族じゃないので、見下していると言うわけではない。盗みを働いた犯罪者だから、そう扱っているみたいです。

「見た所、平民の子供ですね」

「は、放せ!」

「貴族街への不法侵入、貴族への窃盗の現行犯かな?」

「後は、スキルを使っての犯罪行為」

「それも、ありましたね。これって、どうなる?」

「一族、皆殺し。スキルを使った犯罪行為は重罪。全員、迷宮への強制労働」

「仕方ないか…」

 これを聞いて、子供が静かになります。

「た、たすけて!殺される!」

 大声で、子供が叫びます。僕達も、まだ子供。だけど、それより小さい子供が泣き叫んでいます。

 異変を感じて、兵士達がやって来ます。

「どうかしましたか?」

 僕達を見て、姿勢を正す兵士達。

「不法侵入者。どこの子か、知らない?」

「これは、そこの店に出入りしている商人の子供ですね」

 兵士の1人が、身元を知っていたみたいです。

「直ぐに、親を連れてくる様に」

「了解しました」

 兵士は、迅速に行動します。それを見て、子供は顔を真っ青にして震え出しました。自分が手を出した相手が、危険な存在だと理解したみたいです。

「この子が、何かしたのでしょうか?」

 連れてこられた親は、不機嫌そうでした。兵士は、至急連れてこいと言う事で、状況を説明していないみたいです。

「これが、不法行為を行なった」

「私の息子がですか?」

「私は、ソフィー・ドラゴン・ソード」

「はぁ?」

 平民の商人だと、皇族の名前を全員知っているわけではないらしい。ただ、この時点でこの男の人生は終わり。

「馬鹿もの、何をしている!」

 小太りの男が、走りながら叫んできた。そして、子供の親を殴りました。

「申し訳ありません、何卒、お許しを!」

 この商人と取引をしている店の責任者らしいです。

「ここは、貴族専用に区画。何故、平民がいる?」

「今日は、特別な取引の日でして…」

「そのよ様な特例は、無いはずですけど?」

「何を、取引するつもりだったのかな?」

 ソフィーの威圧が発動。商人は、大量の汗を流す。

「そ、それは、こ、ここここ…」

 必死に、抵抗します。

「そう言えば、子供が僕荷物を奪ったには、君たちの指示かな?」

「はい」

 予定外の質問に、思わず答える店主。

「何故、そんな事をしたのかな?」

「商品の価値を確認する為です…」

「この子供が、商品なのかな?」

「縮地の持ち主は、貴重です…」

「ここは、奴隷を扱う店かな?」

 このくにでは、一応合法。ただ、不法な組織も存在しています。

「私は、傭兵ギルドの関係者です。その縁で、取引があるのです」

 店主が、観念して話だします。

「この子供は、あなたの子供?」

「私が運営する孤児院の、子供です…」

 親の方も、観念し出しました。

「普通に、取引すればよかったのでは?」

 不法行為で無ければ、無駄な事をしただけの事。最も、僕達で無ければ、盗みは成功していた可能性があります。

「話している間に、実力を見せると言うことになり、目の前の子供から、荷物を盗めと、何故かなりました…」

 2人は、少し混乱しているみたいです。

「つまり、お前達が命令したのだな?」

「はい…」

「済まないが、関係者を捕まえて、後の処理は頼んで良いかな?」

「了解しました」

 兵士たちは、店主らを束縛して連れて行きます。

「僕は、どうなるの?」

 最初に捕まえた子供は、そのままです。

「勿論、死刑」

「な、なんで、僕は大人に命令されただけなのに!」

「命令させた、存在がいるよね?」

「ここ数日、この周辺で犯罪多発。その調査」

「君のいる孤児院、調査済みです。子供でも、スキルの悪用は犯罪。君の信頼するシスターは、迷宮への捧げものにされてますよ」

 この国で、重罪と認定された人の処刑方法。迷宮に、ある程度の装備を持たせて送り込む。3日間生き延びれば、恩赦の可能性もあります。

 孤児院のシスターが裏でいる色とやっていました。全ては、孤児を救いたいという気持ちからだと思います。だけど、やったことは犯罪。

「奴隷商人や、悪徳孤児院の経営者の逮捕、こっちも利益があったけど、私達の時間を無駄にした。それが一番許せない」


 色々と、スキルを使い画策したシスターがいました。

 博愛精神に溢れ、不法に扱われる孤児を哀れに思い、救うべき立ち上がった。

 利用した相手が悪かった。

 僕達も、色々と思う所はあります。

 全てを助ける事は、最初から無理と割り切っているので、彼女は選択を誤った。

 ただ、それだけ。

 正しい事は、誰も知らない。

 ただ、一つの奴隷商が潰れ、個人が取り壊された。

 1人のシスターが消え、子供達は別の孤児院に移っただけ。基本的な事は、変わらない。

 歴史の表舞台に、縮地を持った人物が登場する事は今後ありません。

 繰り返される日常。


「ここも手狭になりました…」

 対魔ギルド怠惰支部は、現在人が溢れています。

「犬や猫じゃあるまいし、色々と直ぐに拾うのをやめて下さい」

 その原因、君も関係しているよね?呆れているサキヨミさんですは、こちらに有益な情報を予言で知ることができる様になっています。イベントの発生場所を予知できます。先日も、それで手駒が増えました。

「私達だけで、全部は無理。だから、使える手下が欲しい。今後も増やす」

 サフィーは、最近こんな調子です。王城で、何かあったみたいですが、まだ教えてくれません。

 しばらくは、こんな日々が続きそうです。

「狭い所で、縮地は禁止です!」

「申し訳ありません!」

 壁にぶつかり、派手に転んだ子供を叱るシスター。

 対魔ギルドは、賑やかで良いところになりつつあります。







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 この物語は、一旦ここで終わりです。

 もう少し練り込んで、さいかいするかもしれませんが、キリをつけます。


 ここまで、読んでくれて、ありがとうございました。

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ギアスキルー混沌の神への誓いー 水室二人 @za4kiwalasi

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