六章 岩山田の答え

「お宅の庭を調べてみても構いませんか?」


 今朝、林家に着くなり岩山田が喜美子に言うと、喜美子はぎゅっと唇を噛んで、覚悟を決めたような顔をした。そして「何のために!」と横から反論する息子の行斗を「いいのよ」と、静かになだめた。


「いつかこうなるとわかっていましたから、仕方ないですね。掘り起こしてください」


 喜美子は何もかも認めるような口調で行った。行斗は、ふんっと顔を背け、拳を握りしめていた。それはどこか子供じみた仕草に見えた。




 室内で静かに警察の作業を見守っていた喜美子に、岩山田は、男性の白骨遺体が発見されたことを伝えた。


「そうですか。骨まで消えたりするなんてことは、やっぱりないんですね」

「あの骨は、ご主人、林克行さんですね? 行斗くんのDNAと照合すれば親子関係がわかります」

「調べなくても結構です。あれは、主人、克之です」


 岩山田は喜美子の座っているソファの向かいに座った。


「ご主人が亡くなったのは、十年前ですね?」

「その通りです。刑事さん、もうわかってらっしゃるんでしょう?」

「だいたいのことは」

「刑事さんの思っている通りです。十年前、あの人が……えっと、藤田まもるさんと仰いましたか。ずっと本名を知らずにいました。あの人が、主人を殺しました。そして、林克行として、十年間、生きてきたのです」

「強盗犯の藤田は、林克行として生きてきた」

「そうです。主人と、年齢も背格好も近いタイプでしたので、土地を移動すれば、なりすませると思いました。事実、あの日まで、誰にもバレずに来れたのです」


 息子の行斗は、キッチンのほうで壁に寄りかかって立っていた。会話は聞こえているだろうが、話には入ってこなかった。


「藤田が死んだ日、何があったのか、話してくれますか?」


 喜美子は、うつむいて膝に置いていた手をぎゅっと握った。


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